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阪神・藤浪晋太郎は中継ぎで復調へ イップスはどうすれば治るのか…家族関係が原因のことも
posted2020/10/17 11:03
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
野球を観ていて冷やっとする場面がある。
緩めの打球が一塁寄りに転がり、マウンドを駆け下りた投手がその打球を処理したときだ。
ボールを捕った投手が走りながら下からトスするように一塁手に送球する。その投球スタイルを見ると、何とも言えない思いが脳裏を走るからだ。
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「この投手もイップス気味?」
野球選手、特にボールを投げることを仕事としている投手に、短い距離でのスローイングが苦手な例が意外なほど多い。思い切り腕を振って投げるとボールを制御できるのだが、短い距離で力をセーブして投げようとすると動きがぎこちなくなってきちんと投げられなくなってしまう。
精密な制球力を誇ったあの投手も……
いわゆるショートスロー・イップス(正式名称かどうかは分からないが、球界ではこう言われることが多い)というやつである。
実は精密な制球力を誇った元巨人の桑田真澄さんもこの傾向があって、時々とんでもないボールを一塁に投げることがあった。
「あれだけコントロールのいい投手がなぜ?」――時々起こる悪送球の理由が分からず、あらぬ噂を立てられたりしたのも、このイップスが原因だったと思うと合点がいく。
この他にも横浜や巨人でクローザーとして活躍したマーク・クルーン投手が、ボールを捕ったら一塁にゴロを転がしてアウトを取る場面を見たこともある。元巨人のスコット・マシソン投手や現役ではロッテの澤村拓一投手もショートスローが苦手な傾向がある。
そういう投手は一塁に近いところでボールを捕ると、ほぼ全員が自分で走って距離を詰めて、最後は下からトスするようにボールを投げてアウトを取る。
そんな送球を見ると、どうにも背筋に冷やっとしたものが走ってしまうのだ。
理由はイップスは厄介だ、という思いがあるからだった。