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阪神・藤浪晋太郎は中継ぎで復調へ イップスはどうすれば治るのか…家族関係が原因のことも
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/10/17 11:03
中継ぎへの配置転換で輝きを取り戻しつつある阪神・藤浪。13日の中日戦では161kmをマークした
「人間は何歳になっても変われます」
「人間は何歳になっても変われます。『私はマイナス思考』と言っていた人でも、イメージの転換やセルフコントロールを実践しているうちに、いつの間にか何ごともポジティブに考えていく習慣がついていくこともあります」
「難しいと思った方は、まず『~しなければならない』という考え方を、『~したい』『~になりたい』に転換することから始めてみてください。私はもう何十年も『~しなければならない』というセリフは口にしていません。皆さんも一緒に続けてみませんか」
本書はこう説く。
環境が変化して、新しい自分のイメージを作れれば、イップスを乗り越えられるきっかけが生まれる。
そのことを伝える。
阪神の藤浪は中継ぎに回って変化が
実はこの本を読んで、改めて注目をしているのが阪神の藤浪晋太郎投手だった。
独特のインステップする投げ方という技術的な問題もあり、右打者の内角を狙った投球が抜けて、打者の頭付近を襲うことが何度もあった。そのトラウマから次第に本来の姿を失って、ここ数年は光を失ってしまっていた。
期待が大きいから首脳陣からも厳しく、高いハードルを課せられて、藤浪自身もそれこそ「こうあらねばならない」という重圧に縛られてきていたようにも見えた。
本人がイップスを認めるかどうかは別にして、藤浪もまた、一塁への送球を下から投げる投手の1人でもある。
だが、阪神を襲った新型コロナウイルスのチーム内クラスターで急遽、一軍に昇格し、先発ではなく中継ぎという役割を与えられたことで、新しい自分自身へのイメージが湧いてきているようにも見えるのだ。
全盛時のような160kmの真っ直ぐを投げ、スライダーの制球も安定し出している。まだ時折、抜け球はあるが、テレビ越しでしか見られなくても、何よりマウンドの表情からは以前の悲壮感がなくなり目に光がある。