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決して“お家騒動”ではないヤットとツネのプロ意識 「いつまでも頼ってはガンバの未来に…」
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/10/13 11:00
ガンバを6連勝に導いた宮本恒靖監督。遠藤保仁の期限付き移籍という大きなトピックの中で、プロとして結果で示している
遠藤「競争があるのは当たり前なので」
相思相愛の関係に、期限付き移籍とはいえ一旦、ピリオドが打たれたのは、大物選手の移籍にありがちなお家騒動では決して、ない。
コロナ禍による中断期間が終わり、リーグ戦の再開初戦でJ1リーグ最多となる通算632試合出場の記録を達成し、ピッチに立つたびに記録を更新し続けて来た遠藤ではあるが、今季リーグ戦での先発はわずかに3試合だった。
サブメンバーでピッチに立てない試合だけでなく、8月23日のアウェイ、鹿島アントラーズ戦ではベンチにさえその姿はなく、 今季は完全にレギュラーの座を失っていたのだ。
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「ガンバ大阪という偉大なクラブで競争があるのは当たり前なので、その中で、なかなかチャンスを生かせなかったということがある」
他ならぬ遠藤本人の述懐だ。
競争――。ガンバ大阪の象徴と言っても過言でない男が今年1月、最初の囲み取材の中で何度か口にしたのがこの言葉だった。
「やるからには常に試合に出たいという気持ちは当然あります。ただ、そこは競争になるし、負ければ出られるチャンスも少なくなる」
「いいコンディションといいメンタルの状態を保ちつつ若手と競争しながら、楽しみながらやっていきたい」
沖縄キャンプ最終日に見えた立ち位置
今季の遠藤の立ち位置が表れていたのは2月1日の沖縄キャンプの最終日に行われた練習試合の1コマである。主力組はいち早く京都サンガとの練習試合を終え、ホテルで帰阪の準備を整えていたが、遠藤は若手やサブ組とともに、東京ヴェルディ戦に回っていた。
もっとも、40歳に調整モードは微塵もなく、絶妙の縦パスで攻撃を牽引。3対1の勝利に貢献した。今季最初の公式戦となった2月16日のルヴァンカップでは柏レイソル相手に後半9分から途中出場し、見事に流れを変えてみせた。
印象的だったのは試合終盤、CKから新里亮が同点ゴールを奪ったかに見えたが遠藤がオフサイドを取られ、ノーゴールになった場面のことだ。直後、いつもはクールな背番号7は珍しく副審のもとに駆け寄り、モノを申していた。出場した試合で結果を出したい――という思いは、今季の遠藤がしばしばそのプレーの端々で見せて来たものだ。