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決して“お家騒動”ではないヤットとツネのプロ意識 「いつまでも頼ってはガンバの未来に…」
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/10/13 11:00
ガンバを6連勝に導いた宮本恒靖監督。遠藤保仁の期限付き移籍という大きなトピックの中で、プロとして結果で示している
開幕戦は遠藤を先発起用しマリノス撃破
例えば7月22日のJ1リーグ、サンフレッチェ広島戦。4試合ぶりに先発に復帰した一戦では前半、近年見せてこなかった思い切りの良いミドルシュートを披露。パナソニックスタジアム吹田がドッと沸いていた。
クラブのレジェンドは出場機会を求め、懸命に戦い続けて来たが、宮本監督もまた、指揮官としての信念に基づき、勝利だけを求めてきた。
2月に行われた横浜F・マリノスとの開幕戦では遠藤を先発で起用。前半には遠藤の進言でフォーメーションを変更し、前年王者を撃破していたが、勝利のために最適解を探り続けるのが指揮官の役割である。
「誰をどう起用すれば一番勝利に近づくのか」
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少なくとも昨年までの宮本監督は過度に選手とコミュニケーションを取るタイプではなかったが、起用の有無に関し選手個々に対して、綿密な説明をしないスタイルは全盛期を率いたかつての西野朗監督とて同じこと。良くも悪くも、選手とのドライな関係を保つ宮本監督だが、もちろんそこに悪意は一切、存在しない。
その一例が9月5日のベガルタ仙台戦における選手起用である。前節、ガンバ大阪はFC東京に1対3で完敗。反撃ムードに水を差す藤春廣輝のパスミスが致命的な3失点目につながり、試合後には当人も茫然自失の体で打ちひしがれていた。だが藤春は仙台戦でも再び先発に名を連ねていた。
「ミスをしたあとの試合は自分の中でも出られると思っていませんでした」と藤春にとってはサプライズ起用だったが、宮本監督の発想は実にシンプルだ。
「誰をどういう風に起用していけば一番勝利に近づくのか、それをやるのが監督の仕事」
そんな宮本流のマネージメントが奏功し、藤春は奮起。6連勝のスタート地点となった北海道コンサドーレ札幌戦では終盤に劇的な決勝点をアシストし「チームと監督のために勝てて良かった」と語るのだ。
ガンバ大阪に限らず、プレーの強度と運動量が不可欠な現代サッカーにおいて、守備面では不安を抱える40歳を常に先発で起用するのはもはや無理があったのは紛れもない事実である。
「もちろんスタートで行ってもらう試合、途中から力を出してもらう試合もあるということは伝えてやってきていました」(宮本監督)