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「なぜ、自分のドリブルは抜けるのか」意識高すぎルーキー・三笘薫が筑波大で書いた卒業論文
posted2020/10/14 11:01
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Getty Images
小型のアクションカメラ『GoPro』を頭につけ、ボールを持って相手に向かっていく。ドリブルの視野を映像で考察するためである。周囲の協力を得て、他の選手とも比較し、徹底的に検証した。
なぜ、自分のドリブルは抜けるのか――。
川崎フロンターレの三笘薫が、筑波大時代に取り組んだ卒業論文のテーマだ。Jリーグ史上5人目の新人二桁得点にあと1点と迫る23歳のドリブラーも、ほんの1年前はいまの大学4年生と同じようにレポートに追われていた。関東大学リーグの試合翌日、疲労が残っていても夜遅くまでパソコンに向かうこともあった。体育専門学群(体育学部)のサッカー研究室で、三笘の卒論指導をした小井土正亮監督はしみじみと振り返る。
「すごく真面目でしたね。テーマも自分で決めて持ってきましたから。ドリブルするときの視線が他の人とは違うという仮説を立て、グラウンドで実験し、一生懸命に検証していました。最後まで自分で考えるタイプで、すぐに『どうしたらいいですか』と聞きに来ることはなかったです」
「敵の体を動かせば、勝ち」
検証の結果、パスを受ける前の視線に違いがあった。三笘はボールが来るぎりぎりまで目の前の相手とスペースを視野に入れ、ドリブルを開始してもほとんど下を向くことはない。巧みにボディフェイントを入れ、相手をよく見て仕掛けていく。筑波大時代に本人から真意を聞いたことがある。
「相手の重心をずらすことは意識しています。敵の体を動かすことができれば、勝ちですから」
論文には抜けるドリブルのメカニズムが丁寧に書き込まれており、いまも筑波大の研究室に保管されている。有益な情報として後輩たちに受け継がれているが、中身以上に価値あるものも残したようだ。