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筑波大3年角田涼太朗がマリノスを選んだ理由は? 「先輩・松田直樹さんも超えていきたい」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2020/10/09 11:01

筑波大3年角田涼太朗がマリノスを選んだ理由は? 「先輩・松田直樹さんも超えていきたい」<Number Web> photograph by Takahito Ando

2022年シーズンからマリノス加入を発表した筑波大3年DF角田涼太朗。早い決断は彼のキャリアを後押しするか

冨安の活躍、先輩たちが敷いたレール

 ただ、彼はまだ大学3年生だ。正式加入は再来年の2022年シーズンから。それでも早期決断をした理由は、何より彼が「より早く経験を積んでステップアップしたい」というマインドが強いということにある。

 今季のJリーグは「豊作の年」と呼ばれるほど多くのルーキーや特別指定選手が多くの出場機会を掴んでいるが、その多くが攻撃的なアタッカーやサイドバックの選手。チームの核としてプレーすることが求められ、さらに経験が物を言うCBとしてポジションを勝ち取ることはそう容易いことではない。だが、周囲を見渡せば、同世代のCB冨安健洋は日本代表レギュラーの座を勝ち取っている。年齢はたった1つ上。すでにヨーロッパのトップリーグで活躍するトップランナーに「後に続きたい」という思いもある。

「筑波大進学を選んだ時点で、在学中にJクラブの特別指定選手になってプロの舞台を早く経験したいというプランがありました。ただ入学後、制度の変更で特別指定選手は内定者ではないと許可が下りないようになったんです。先輩の三笘さん(薫/川崎フロンターレ)に『プロに行けるチャンスがあるなら、早いうちに経験をしたほうがいい』とアドバイスをもらっていましたし、実際に昨年にJクラブの練習参加をさせてもらった時も、スピード感が全然違った。そういう助言や経験が決断を早めた理由です。

 もちろん筑波大で成長できないというわけではありません。筑波大での時間があったからこそ、間違いなくここまで多くのクラブからオファーをいただける選手になれたと思います。ただ、次のステップに進むためには、やはりプロの舞台を少しでも早く経験することが大事だなと思いました」

 筑波大は勉強のレベルも高く、サッカー部では大学生である以上はしっかりと授業を受け、勉学を疎かにしてはいけないという共有するマインドがある。現に角田は卒論以外の必要単位はほぼ全て取得済みだ。きちんと大学生のとしての本分を果たしながら、特別指定選手としてJリーグの舞台に立ちたい。「文武両道」を実現する上でもマリノスの環境は魅力的だった。

 過去を振り返ると明治大からキャリアをステップアップさせた長友佑都、武藤嘉紀、室屋成という成功モデルがいる。彼らも現在の角田と同じように大学3年でプロ入りを決め、4年の時はすでにFC東京の選手として活躍し、そこから日本代表、海外移籍へと駆け上がって行った。彼自身も先輩たちが敷いてくれたレールをイメージしているだろう。

筑波大・小井土監督も角田を尊重

 筑波大蹴球部を率いる小井土正亮監督も角田の考えを尊重する。高いレベルでの文武両道をこなす権利を掴めるか、掴めないかはすべて自分次第なのだ。

「卒業前にプロの世界にトライする気持ちは、僕も応援したいと思っています。ただ、プロの世界は甘くない。まずはマリノスで信頼を勝ち取って、試合に使ってもらえるように成長をしないといけない。『来てほしい』と求められる選手になってほしいと思います」(小井土監督)

 そのことは角田自身がよく理解している。

「自分の中でモヤモヤする気持ちもあるのかと思ったのですが、決めた後はすっきりとした気持ちになれたんです。高校時代、プロか大学か迷って決断したときは、自分を追い込んでしまったというか、早く決めなきゃと思い詰めていた。でも、今回は自分が思っていた以上に覚悟が明確に決まった。あとはこの決断が良かったということを、周囲にも自分自身も納得させたい」

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