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Vリーグコーチが異例の大学監督兼任…柳田将洋も影響を受けた酒井大祐の「プロ意識」とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySUNTORY SUNBIRDS
posted2020/10/09 11:00
サントリーのコーチを務めながら、今季から古豪・大阪商業大学男子バレー部の監督にも就任した酒井大祐
早くもチームに現れている酒井効果
今年はコロナ禍で春季リーグなどの大会が中止となったため、対戦相手のデータがない。しかも今回の秋季リーグは、感染予防のため試合ごとに選手や関係者を入れ替えており、他大学の対戦を会場で見ることができない。つまりほとんど相手の情報がない中で試合に臨まなければいけない。
4日のびわこ成蹊スポーツ大戦では、試合前練習の間、酒井は選手1人ずつに何かアドバイスをささやきながら、相手チームの練習を観察していた。短い時間で分析し、試合直前の円陣で、手元のボードを使い、相手スパイカーの癖や得意なコースと、それに対するブロックのつき方、ディグの位置どりなどを手際よく説明した。
伝統の緑のユニフォームを身にまとった選手たちは、時々頷きながら、酒井の話を一言一句逃すまいと真剣な表情で聞いていた。その様子を2階から見ていたマネージャーが、「すごい。なんか違う。やっぱりプロの人が入ると違う」とつぶやいた。確実に変化は表れているようだ。
試合では、狙い通りにディグがよく上がり、得点につながった。馬場は試合後こう語った。
「相手の映像を見たりできない中、すごく心強かったです。バレーボールがすごくやりやすい環境でした。酒井監督には『ミスを気にせず、切り替えてしっかり次のプレーをやればいい』とよく言われます。今まではミスをしたらみんな下を向いたり、『次またミスしたらどうしよう』と考えてしまっていましたが、今日は切り替えてプレーできました」
目標やポイントはLINEでも共有
3日の開幕戦は酒井が不在の中、明治国際医療大学に3-1で勝利しており、大商大は連勝スタートで2部の首位に立った。
秋季リーグ開幕の前夜に、酒井は選手たちと共有するグループLINEにPDFデータを送った。サーブ、ブロック&ディフェンス、ディグアタックなど、スキルごとにポイントや心構えをまとめたものだ。
例えばサーブなら、「アグレッシブさを忘れない。勝負すると決めたら迷わない」。ブロック&ディフェンスなら、「流れるブロックはしない。後ろにはまだ仲間がいる」。目標数値なども入れながら基本的なことをわかりやすくまとめ、「覇気あるチームで、応援してもらえるチームへ」という就任当初から掲げる目標を改めて意識づけした。