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Vリーグコーチが異例の大学監督兼任…柳田将洋も影響を受けた酒井大祐の「プロ意識」とは?
posted2020/10/09 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
SUNTORY SUNBIRDS
関西の西の端、兵庫県赤穂市の小さな体育館で、酒井大祐は監督としての1勝目を刻んだ。
V.LEAGUE DIVISION1に所属するサントリーサンバーズのコーチを務める酒井は、今春から、大阪商業大学バレーボール部の監督も兼任している。
大商大が所属する関西大学リーグは、10月3日に秋季リーグが開幕。4日に関西福祉大の体育館で行われたびわこ成蹊スポーツ大との試合で、酒井は初采配を振るった。大商大は終始リードする展開で、セットカウント3-0の勝利を収めた。
「もうドキドキ。サントリーとはまた違った緊張感がありました」
酒井は静かに喜びを噛み締めた。
コーチという肩書きがありながら
元Vリーガーが大学の監督を務めることは珍しくないが、Vリーグのチームでコーチを務めながら大学の監督をすることは異例だ。
酒井は、VリーグのJTサンダーズ、サントリーでリベロとして活躍し、日本代表でも2015年ワールドカップや16年リオデジャネイロ五輪世界最終予選などでプレーした。18年に現役を引退した後は、サントリーのコーチとなった。
昨年末、元日本代表監督で、現在は大商大公共学部教授、バレー部の総監督を務める植田辰哉氏に、監督をやってくれないかと打診された。大商大バレー部は、かつて4度の日本一に輝き、多くのVリーガーを輩出してきた名門。女子日本代表の眞鍋政義前監督や、男子日本代表の南部正司前監督も大商大のOBである。
しかし近年は関東の大学に水をあけられ、次第に関西でも勝てなくなり、昨年、関西大学リーグの2部に降格した。古豪の低迷に歯止めをかけ、再建する役割を、植田氏は酒井に託した。
自身も大商大OBである植田氏はこう語る。
「OBは、おそらく大商大OBを監督にという気持ちが強いと思いますが、僕はそれは違うんじゃないかと思った。プロの指導者を連れてこなければという結論に行き着きました。酒井君はまだ指導者の経験は長くありませんが、サントリーでブラジル人コーチなどいろいろな人と接しているので、世界の新しいことをどんどん取り入れてくれると期待しています」