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“幻の世界王者”尾川堅一が絶体絶命のピンチに! コロナ禍だから実現した日本人選手の激突がアツい
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byNaoki Fukuda
posted2020/10/06 11:00
尾川堅一(右)と西谷和宏、国内トップ選手同士の闘いは白熱した
海外選手に「もうちょっとがんばれよ」とも
トップ選手同士の日本人対決の良さは意地と意地がぶつかり合うことだろう。どんな状況でも最後まであきらめないのが日本人ファイターの特徴だ。外国人選手の場合、実力があってもファイトマネーの金額によって明らかにやる気があったりなかったりと、モチベーションに波があることが多い。だから気持ちが乗らないと「もうちょっとがんばれよ」と言いたくなるくらいあっさり負けてしまうことがあるのだ。
トップ選手はみんな苦労してランキングを上げており、ある程度の地位までいくとリスクを避ける傾向がどうしてもある。これは選手本人というよりは周囲の考えであることが多いのだが、それでも日本人トップ選手たちは積極的に拳を交えるべきではないか。尾川と西谷の熱いファイトを目にして、あらためてそう感じた。
負けて評価を落とさなかった西谷は試合前「コロナとは関係なく、日本人同士でトップを決めて(その選手が)世界にいくのがいいと思う」と持論を展開した。やはり選手本人はやりたいのだ。西谷の意見に共感するトップ選手は多いのではないだろうか。
日本人トップ選手の試合をこれからも
外国人選手の招へいはほどなく可能となる見通しだが、日本人トップ選手がぶつかるトレンドはこのまま続いてほしい。国内でライバルとの争いに勝利し、「さあ、日本の代表として行ってこい」とボクサーからもファンからも背中を押されて世界の舞台に進む。地道ではあってもそうしたプロセスを踏むことが、国内ボクシングの活性化にもつながると思う。
チャンピオンの事情で急に声がかかることもあるから、国内ナンバーワンを証明しなければ世界挑戦をしてはいけないという話ではない。ただ、少なくとも世界チャンピオンの数が多いからといってボクシングが盛り上がるわけではないという事実はこの10年ではっきり証明されてきた。コロナ禍で会場から離れてしまったファンを呼び戻すためにも、国内のリングがますます充実することを願うばかりだ。