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「昭和っぽい経歴」「野性の本能」に技術と理論が融合 勅使河原弘晶、世界挑戦への新境地
posted2020/10/10 11:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
東洋太平洋スーパー・バンタム級タイトルマッチが8日、後楽園ホールで行われ、チャンピオンの勅使河原弘晶(三迫)が挑戦者15位の河村真吾(ミツキ)を6回1分40秒TKOで下し、4度目の防衛に成功した。
「前回の試合よりも進化した姿を見せられたと思う」
圧勝で試合を終えた勅使河原がリング上で胸を張った。試合は初回からチャンピオンのペース。広いスタンスで小刻みにぴょんぴょん跳びはね、鋭くステップインしてパンチを当ててはバックステップで相手の反撃を許さない。サウスポーの河村に少しずつダメージを与えながら試合を組み立てた。
「無理に倒すのではなく、弱らせてから倒そうと思っていた」という作戦通り。そして「6回から10回くらいに倒そうと思っていた」との思惑を実現すべく6回にペースアップすると、右ストレートをボディに打ち込み相手のガードを下げさせてから顔面への右ストレートで挑戦者をグラつかせ、すかさず畳みかけてキャンバスへ。立ち上がった河村にラッシュをかけ試合を終わらせた。
このトレーナーにきちんと教わりたい
勅使河原はこれまでWBOアジアパシフィック・バンタム級王座を獲得し、クラスを上げて東洋太平洋王座に就いて4度の防衛に成功。世界ランキングはIBF3位、WBC7位だから、キャリアからいってもランキングからいっても、いつ世界挑戦をしてもおかしくないポジションにいる。
そんな勅使河原が転機を迎えたのはこの春のことだ。新型コロナウイルスの影響で所属していた輪島功一スポーツジムでの練習がままならなくなると、輪島会長が現役時代を過ごした三迫ジムで練習させてもらうようになる。そこで出会ったのが加藤健太トレーナーだった。
このトレーナーにきちんと教わりたい。
そう思うまでに時間はかからなかった。