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“幻の世界王者”尾川堅一が絶体絶命のピンチに! コロナ禍だから実現した日本人選手の激突がアツい
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byNaoki Fukuda
posted2020/10/06 11:00
尾川堅一(右)と西谷和宏、国内トップ選手同士の闘いは白熱した
こんな試合はコロナがなければ見られない
トップ選手同士の好カードで見応えも十分。ファンにとってはこの上なく嬉しいことではあるが、コロナ禍という社会のマイナス要因がなければこの試合は実現しなかっただろう。平時であればこのクラスの選手は外国人選手と対戦するのが一般的で、実際に尾川と西谷が日本人選手と対戦するのはともに5試合ぶり。国内対決からは3年以上も遠ざかっていた。
尾川は当初、昨年12月のWBOアジアパシフィック戦で負傷ドローに終わったジョー・ノイナイ(フィリピン)との対戦を希望し、相手陣営から合意を得てスケジュールもほぼ決まっていた。しかしコロナ禍の影響で入国規制が強まり、ノイナイの来日の見通しが立たなくなった。そこで急きょ西谷にオファーを出し、西谷が快諾した――というのがこの試合が実現した経緯である。
注目の日本人対決が続々
外国人選手を使えないという状況はマッチメークをする側にとって頭の痛い話とはいえ、こればかりはどうにもならないのだから仕方がない。ならば対戦相手を日本人選手の中から探すのみ。こうして尾川と西谷のように、平時であれば実現し得なかった日本人対決がいくつも組まれる流れができている。
前WBO世界スーパー・フェザー級王者の伊藤雅雪(横浜光)は12月26日、無敗の東洋太平洋同級王者、三代大訓(ワタナベ)との対戦が決まった(当初の11月5日から延期)。「こういう時期だからこそ日本のリングを盛り上げたい」と話したのは海外での試合が多い伊藤。三代も「こういう状況でなければ実現しなかった」と“あこがれの存在”でもある伊藤との対戦を歓迎した。
他にも今をときめくバンタム級2冠王者、井上尚弥の弟である井上拓真(大橋)が年明け1月14日、東洋太平洋同級王者の栗原慶太(一力)に挑戦することが発表された。昨年12月にWBC同級暫定王座から陥落したばかりの拓真だから、通常であれば再起戦の相手は間違いなく外国人選手が相場だ。陣営もその腹づもりだったが、情勢を判断してターゲットを栗原に変更し、栗原もそのオファーに即OKした。