マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「エースは中2の女の子」北海道、過疎の町の野球チームから“初の甲子園選手”が出るか
posted2020/10/05 17:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hidaka Baseball Club
毎年、「冬の日高」に呼んでいただくようになって、もう10年を越すほどになろうか。
当時、お世話になっていた雑誌『野球小僧』の読者だった佐藤大(さとう・だい)さんという方からの投稿が縁になって、長いお付き合いが始まった。
佐藤さんは、北海道日大高(現・北海道栄<ほっかいどうさかえ>高)、札幌大の左腕投手として鳴らした人で、卒業後は家業のスポーツ用品店を継ぐために故郷・浦河に戻り、その経営に携わるかたわらで、「日高ベースボールクラブ」という小・中学生の野球チームを運営してきた。
競走馬、日高昆布、襟裳岬……
毎週末、地元・日高のあちこちのグラウンドで練習に取り組み、雪に閉ざされる冬は、体育館でトレーニングに励んで、北海道内・外の大会に参加している。
その冬の練習に呼んでいただいて、クラブの少年、少女たちに野球を教える……と言ってはおこがましいが、一緒に野球で遊びながら、野球の面白さ、楽しさを感じてもらう。そんなことを始めて、もう10年以上になる。
北海道の日高地方といえば、競走馬の産地で、日高昆布が有名で、いちばんとっつきが襟裳岬……そんなイメージかもしれない。実際に千歳の空港から車で「日高」に入ると、左手は競走馬がのどやかに草を食む牧場が広々と続き、右手には太平洋がどこまでもキラキラと輝いて、動くものがまったくない景色がえんえんと続いていく。そんな<空気>と、裏表のない土地の人たちがよくて、私の毎年の冬の大きな楽しみになっている。
「目をつぶってゴロを捕る練習」
伺って、グラウンドや体育館でやっていることといえば、ほとんどが「練習方法」のレッスンだ。
<形>はいじらない。投げるフォーム、打つフォームについては、日ごろから佐藤監督が教えているわけで、たまに顔を出すだけの者が余計なことを言っては、肝心な子供(選手)たちが頭を混乱させる。