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「エースは中2の女の子」北海道、過疎の町の野球チームから“初の甲子園選手”が出るか
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHidaka Baseball Club
posted2020/10/05 17:01
北海道の日高ベースボールクラブ。中、小学生合わせて15人。エースは中学2年の女の子だ
今秋のドラフト1位候補・伊藤大海投手(苫小牧駒大)の取材の翌々日、同じ苫小牧の球場に地区予選の決勝を見に行った。スコアボードを見ると、エースで4番で、試合開始の整列ではいちばんホーム側に立ってるじゃないか。
ええっ、キャプテンも……か。
子供の頃のやんちゃぶりがパッと思い出される。一人三役、だいじょうぶなのかな……。
期待より、完璧に“心配”のほうが前に出る。もうすっかり、身内の心持ち。記者席で観戦する気分じゃない。父兄たちの応援席に混じる。
三兄弟の末っ子「小沼C」
相手の鵡川高だって、甲子園の経験もある手ごわい相手だ。油断したら……とおそるおそる見ていると、結構頑張っている。
速球は135キロ前後だが、タテのスライダーを交えて、低く、低く集めて、バットの芯を外している。
たまに走者は出すが、そこからのピッチングが見事だ。頼りにしているのはスライダーなのだろう。そのスライダーをストライクゾーンで使ったり、ストライクからボールの低さに落として空振りを奪ったり、ピンチを涼しい顔で切り抜けている。
いつのまに、こんなすごいヤツになったんだ……。
小沼快登には、お兄ちゃんが2人いて、最初はそのお兄ちゃんにくっついてクラブに来ていた。たしか小学4年ぐらいから年上のチームメイトたちに混じって、練習していたように思う。
3人兄弟だと、名前が覚えきれない。私は、長男を「小沼A」、まん中を「小沼B」と呼んでいたので、快登君は「小沼C」だった。
日高ベースボールクラブは、出来る子には中学生と同じ練習をさせる。小沼Cもその口だったが、走るメニューでも、中学生がへばっているのに、「C」だけはハーハー言いながらも、「次はなんですか?」。そんな顔でこちらを見上げていた。
負けん気が強烈で、子供のくせに、ちょっと見栄っ張りで…。かわいいヤツだった。