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高評価なのに……久保建英をエメリ監督がスタメンに使わない理由とは?
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2020/10/01 18:30
アラベス戦ではスタメン出場が期待されていた久保建英。登場したのは後半30分からだった
ゴール左を狙う「インカーブのシュート」
2つ目は89分のシュートです。右サイドからのドリブルでペナルティエリアへ入り、対峙するDFをブラインドにして左足のインカーブで狙いました。右サイドから巻くような軌道でゴール左を狙うインカーブのシュートは、リオネル・メッシも得意としています。
この場面でも味方選手からパスを受ける直前に、バックステップを踏んでいます。それによって、自分のタイミングで1対1に挑み、シュートへ持ち込めるようにしていました。
バルセロナ戦のパフォーマンスは、現地のメディアからも高評価を受けていました。だからこそアラベス戦は久保の先発が予想されましたが、4試合連続の途中出場となりました。
ウナイ・エメリ監督の心理を想像すると、スタメンではなかった理由が浮かんできます。
アラベス戦でもスタメンに起用されなかったのは……
バルセロナに0対4で敗れた直後の1戦で、しかもホームゲームということを考えると、アラベスには確実に勝たなければならない。相手がここまで1分2敗と苦しんでいることを踏まえても、ビジャレアルには勝利が求められていました。
そこで、エメリ監督はシステムを4-3-3に変更しました。守備の局面では4-5-1になる立ち位置で、3トップの右サイドにはサムエル・チュクウェゼでも久保でもなく、ヘラルド・モレノが起用されました。
スペイン代表でもあるこのレフティーは、得点能力はもちろん守備の意識が高い。安定感のある戦いをエメリは求め、久保はこの試合でも途中出場の役割を与えられることになったと考えます。
ピッチに立ったのは後半30分でした。チームで最初の交代カードだったのは、好意的に受け止めるべき要素でしょう。
ボールロスト2回も、リカバーが見事だった
出場してすぐに、ボールロストが2度続きました。1対3とリードされているアラベスが、リスクを背負いながら攻撃をしかけてきたことで、ビジャレアルは全体のバランスを崩してしまいます。チームとしてポゼッションをするのが苦しいなかで、久保もボールを失ったのでした。マジョルカ在籍時から慣れている右サイドではなく、左サイドで起用されたことも、多少なりとも影響していたかもしれません。
しかし、ここからの精神的なリカバーが、実に見事でした。