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夏はサッカー、冬はスキーに熱中…シュバインシュタイガーの少年期と、他競技経験のススメ
posted2020/10/01 08:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
「二兎を追うものは一兎をも得ず」という言葉は本当なのだろうか?
1つのことに集中して取り組むことでその分野を極めるという“道”の精神は、どの分野においても語り継がれている1つの真理だろう。
真摯に向き合い、自分を律し、自問自答を繰り返し、やれることを丁寧に取り組んでいく。実際に小さいころから1つのことを中心にやり続けて、大成した選手はたくさんいる。
ただ、それだけが答えなのだろうか。そのやり方こそが、子どもたちが自分たちの能力を最大限引き出すための最適解なのだろうか。
ドイツにおいては特に最近は幼少期から小学校期にかけて、1つのスポーツだけをやるのではなく、様々なスポーツをやってみることが推奨されている。
10歳までは繊細さを感じさせる年代だ。身体を自分のイメージ通りに動かせるようになるというのはこの年代における大事なテーマである。様々な遊びやスポーツに取り組んでいくことはポジティブな作用があり、逆にこの時期に同じような動きをあまりに繰り返し行いすぎると、その後の成長に弊害が出る恐れがあるという研究報告もあると、国際コーチ会議の講義で聞いたことがある。
「スキーでのバランス感覚は役立った」
実際にドイツのプロ選手には子ども時代サッカーだけではなく、他のスポーツをしていた選手も少なくない。代表例は元ドイツ代表バスティアン・シュバインシュタイガーだろう。少年期を過ごしていた地域が山間だったため、冬場にはサッカーがそもそもできないという事情もあったが、夏はサッカー、冬はスキーに取り組んでいたという。
「スキーは大好きだよ。スキーで培ったバランス感覚はサッカーにも間違いなく役立った」
そんなシュバインシュタイガーの古巣であるバイエルンでは、日本でいう小学校3年生年代に当たるU-10以下のチームの活動廃止を決断している。
U-15までの統括部長ペーター・ベニンガーは「子どもたちがサッカーばかりではなく、もっと自由な時間を楽しめるようになり、他のスポーツをする機会もあってほしいと思っている。スポーツ学の側面からも異なるスポーツをすることは、サッカーのクオリティを高めるうえでもポジティブな効果がある」と理由を明かしていた。
「他のことをしなさい」という強制ではない。でもサッカー以外のことも楽しんで遊ぶことは、フィジカル面でもメンタル面でも大きな意味があることだ。