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短縮シーズンと短期決戦。「投高打低」に逆行するヤンキースは“ダークホース”かもしれない
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2020/09/26 10:00
9月16日の試合で復帰したアーロン・ジャッジ。投高打低の環境で投手陣が苦しむ中、打撃でヤンキースの突破口を開けるか
ややいびつな印象を与えるのは、ブレーヴスとパドレスだ。ブレーヴスはブルペンが3.36と全体で3位なのに、先発の防御率が5.66と29位に低迷している。一方のパドレスは、先発が3.41(3位)と好投しているのに、ブルペンが4.36(16位)とやや不安定だ。ただ、どちらも潜在能力の高い若手が多いチームなので、勢いに乗ると、サプライズを起こすかもしれない。
攻撃力に眼をやると、これまたドジャースが上位を占める。319得点(2位)、104本塁打(1位)と隙がない。ムーキー・ベッツの獲得は大成功だった。フランク・ロビンソンに次ぐ史上2人目の「両リーグMVP」に輝くことを期待したい。
ドジャースの攻撃力に肩を並べるのは、ブレーヴス(326得点、98本塁打)、パドレス(302得点、88本塁打)、ヤンキース(299得点、91本塁打)、ホワイトソックス(283得点、91本塁打)あたりだろう。
駒がそろったときのヤンキース打線は脅威になる
なかでも最大のダークホースになりそうなのは、投高打低現象に逆行するヤンキース(チーム防御率は4.24で12位、ブルペン防御率は4.44で17位)だ。
なにしろ、アーロン・ジャッジ、ジャンカルロ・スタントンといった2門の大砲を故障で欠き、ゲイリー・サンチェスやグレイバー・トーレスが不振をかこった状態で、この数字を弾き出したのだ。
その大砲が戦線に復帰してきた。DJ・レメイヒュー、ルーク・ヴォイト、ジオ・アーシェラが好調を維持しているだけに、駒がそろったときのヤンキース打線はやはり脅威の存在となる。
ワイルドカード・シリーズの相手は、ホワイトソックスかツインズだ。どちらも楽な相手ではないが、ここを勝ち抜けば、地区シリーズの相手はおそらくレイズだ。レギュラーシーズンでは、レイズ投手陣の変化球攻めにさんざん手を焼かされたが(対戦成績は2勝8敗)、短期決戦のポストシーズンではどう転ぶかわからない。
そのためには、ゲリット・コールを初めとする投手陣の頑張りがどうしても必要だ。新星デイヴィ・ガルシアの大化けはまだ少し先だろうから、とりあえずは田中将大とJ・A・ハップの奮起が鍵となる。ALCSの相手は、おそらく中地区1位のチームになる。
というわけで、今季のワールドシリーズは、大変予想しづらい。データを見ればドジャースの優位は動かないが、短縮シーズンのおまけに付けられた短期決戦だけに、不確定要素が非常に多い。ドジャース対ホワイトソックス、ドジャース対ヤンキースといったカード以外に、ブレーヴス対ホワイトソックス、パドレス対レイズという伏兵対決のカードも夢想できそうな気がする。楽しみに待とうではないか。