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短縮シーズンと短期決戦。「投高打低」に逆行するヤンキースは“ダークホース”かもしれない

posted2020/09/26 10:00

 
短縮シーズンと短期決戦。「投高打低」に逆行するヤンキースは“ダークホース”かもしれない<Number Web> photograph by AFLO

9月16日の試合で復帰したアーロン・ジャッジ。投高打低の環境で投手陣が苦しむ中、打撃でヤンキースの突破口を開けるか

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 プレーオフの前からプレーオフが始まってしまった。そんな印象さえある。

 大詰めを迎えた大リーグで、ポストシーズン進出争いがきわどい。とくにナ・リーグが混戦だ。各地区首位の3チーム(ブレーヴス、カブス、ドジャース)と西地区2位のパドレスは進出を決めたが、残り4つのスポットがまだ確定していない。短縮シーズンの掉尾に各リーグ8チームずつが生き残る変則フォーマットとは、こんなにこじれるものなのか。

 それでも、マーリンズとカーディナルスは、進出の可能性が高い。東地区では一時期、フィリーズが2位に入るかと思わせたが、ブルペン防御率が7点台(30球団中最悪)では息がつづかない。

 中地区も、実はまだわからない。レッズ、ブルワーズが踏ん張っていて、カーディナルスを含めた3球団(2位~4位)が、そろって進出を決めるかもしれない。西地区3位のジャイアンツも首の皮一枚で可能性を残しているが、どうも投手力が見劣りする。私の希望は中地区から4球団だが、カブス以外は、どのチームもふらふらの状態でポストシーズンに突入することだろうから、このあと勝ち残っていくのは至難の業だ。

 一方のア・リーグは、東地区=3球団、中地区=3球団、西地区=2球団ですんなりと決まりそうだ。こちらも、中地区のレベルが高い。地区3位のインディアンスでさえ、先発投手陣の防御率(9月22日現在2.99)は30球団中ベストだ。貧打にあえぎつづける攻撃陣が突然噴火すれば、ポストシーズンで波瀾を起こす可能性も、あながちなしとしない。

 こうして見てくると、「投高打低の年」にふさわしく、王座獲得の鍵は、やはり投手力にかかっているようだ。

30球団中最高勝率のドジャースは「層の厚い」

 チーム防御率3点台を維持する10球団(ベストはドジャースの3.04。10位はレッズの3.96)は、ポストシーズン進出をほぼ手中に収めている。

 30球団中最高勝率のドジャースは、先発防御率(3.25)でもブルペン防御率(2.82)でも全体で2位につけ、抜群の安定感を誇る。エースのウォーカー・ビューラーが本調子でなく、前田健太をトレードに出してさえこうなのだから、層の厚さは素晴らしい。地区シリーズで当たりそうなパドレスが難敵だが、ここを突破すれば、32年ぶりの世界一も視野に入ってくるのではないか。

 ツインズとホワイトソックスもバランスがよい。前者は、先発が3.47(全体4位)で、ブルペンが3.48(5位)。後者は、先発が3.54(6位)で、ブルペンが3.69(7位)。どちらも打線に破壊力があるだけに、波に乗れば台風の目となる可能性がある。

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ニューヨーク・ヤンキース

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