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ネイマール乱闘退場は賛否両論だが……ロべカルやD・アウベスも被害、ブラジルサッカー人種差別史
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2020/09/21 17:00
今回のPSG対マルセイユの件は、人種差別的な言動が原因で大乱闘になったとされ、調査に入っている
欧州でプレーするようになると人種差別が
ブラジルで黒人選手の名声を決定的に高めたのが、ペレである。1956年、15歳でサントスからデビュー。圧倒的なスピード、驚異的なテクニック、誰も思いつかないアイディアを備えた天才だった。ワールドカップで3回優勝し、キャリアを通じて1367試合に出場して1282得点をあげたとされ、「フットボールの王様」と呼ばれた。
以来、ブラジルは多くの黒人の名選手を輩出しており、この国のフットボールは黒人選手抜きでは語れない。
1980年代以降、大勢のブラジル人選手が欧州でプレーするようになると、人種差別を受けるケースが続出する。
世界フットボール史上最高の左SBの1人であるロベルト・カルロスは、2011年のアンジ・マハチカラ(ロシア)在籍中、対戦相手のサポーターからバナナを投げつけられた。
ダニエウ・アウベスの苦痛な訴え
また右SBダニエウ・アウベス(現サンパウロ)も、バルセロナ在籍中の2014年、スペインリーグの試合で右CKを蹴る直前、スタンドからバナナを投げ入れられた。何食わぬ顔で平らげてから、CKを蹴った。
当時、彼はこう語っている。
「スペインでは、対戦相手の相手サポーターからひっきりなしに『サル』と罵られた。最初は大きなショックを受けた。とても悲しかった。でも、そのうち『彼らは教養のない、取るに足らない人間なんだ』と思うようになった。すると、もう気にならなくなった。人種差別は、世界から永久になくならないよ」
フットボールにおける害悪は、人種差別行為だけではない。審判に見えないところでの暴力行為、ありとあらゆる種類の差別的発言、さらには審判の目を欺こうとするシミュレーションなどの不正行為が横行している。選手もサポーターも、フェアプレーの意識がラグビーなど他のスポーツと比べて低いと認識せざるをえない。
その一方で、フットボールは100年以上前から世界一の人気スポーツであり続けている。それは大衆から圧倒的な支持を受けてきたからだが、その悪しき側面の1つとして人種差別などの不適切な行為がある。