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「羽生さん、藤井さん以外もぜひ注目を」中村太地七段が語る王将戦リーグ、超一流棋士の魅力
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byKyodo News
posted2020/09/21 11:40
藤井聡太二冠(左)と広瀬章人八段は前期王将戦挑戦者決定リーグでも対局している
前期、藤井さんに勝利した広瀬八段
ここ最近将棋熱が高まっていることもあり、対局を観戦する方も増えたでしょう。羽生先生や藤井さんはもちろん、そして前々回「将棋の体力」について触れた際、永瀬二冠について「いくら将棋のことを考えていても楽しい」とご紹介しました。
そんな彼ら以外の4人も個性あふれる棋士でぜひ注目してもらいたく、それぞれの特徴を話していきたいと思います。
まずは広瀬八段から。実力派の安定した強さを誇るA級棋士で、終盤の読みの正確さや早さなどが抜きんでてすごい方です。若くしてタイトルを取られましたし(2010年度/第51期王位戦)、竜王位も取られていて、実績も抜群です。ここ最近は少々調子を落とされているようですが、その分だけ今期の王将戦に懸ける気持ちは非常に強いのではないか、と思います。
また前期の王将戦挑戦者決定リーグ戦では当時の藤井七段と挑戦権の争いを繰り広げ、最後は劇的な勝利。その時点での藤井さんのタイトル最年少挑戦を阻みました。また非公式戦ですがABEMAのチーム戦でも藤井さんに勝たれています。
メンタル面での強さも広瀬さんの持ち味で、竜王を獲得した時の対局相手は羽生さんでした。羽生さんがタイトル通算100期がかかる戦いで、世間でも“羽生さん応援”の空気が大きかったように感じましたが、広瀬さんはその中でも淡々と自分の将棋を指されて勝ちました。個人的には早稲田大学の先輩でもありますし、研究会でもよく教わっており、その実力を肌で感じる1人です。
「序盤、中盤、終盤、隙がない」豊島竜王
豊島竜王は将棋にかける時間がとても長く、研究熱心、本当にひたむきです。AIでの研究をいち早く取り入れてもいて、棋界の最高位である竜王位に在位しているのも納得の強さです。
そんな豊島竜王を有名にした言葉は……「序盤、中盤、終盤、隙がない」ですね。正確な文言と由来をお知りになりたい方は、それぞれ調べていただければと(笑)。
ただこの表現はまさに豊島竜王の棋風を表しているものだと感じます。非常に着実な手を積み重ねていって勝ち切るというタイプの棋士です。ここ数年は中・終盤のねじり合いも強く充実されている印象で、竜王位と名人位を一気に獲得され、一気に花が開きました。