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「羽生さん、藤井さん以外もぜひ注目を」中村太地七段が語る王将戦リーグ、超一流棋士の魅力
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byKyodo News
posted2020/09/21 11:40
藤井聡太二冠(左)と広瀬章人八段は前期王将戦挑戦者決定リーグでも対局している
藤井二冠に5戦全勝、その理由は……
また豊島竜王で話題になっているのは「藤井二冠に対する強さ」です。
これまで公式戦で5連勝。藤井二冠にとってはまさに強敵となっています。少し前の対戦を振り返った際、豊島竜王が勝利を挙げた理由としては、序・中盤で藤井二冠がなかなかリードを奪えない展開となり、中・終盤で豊島竜王がリードしたまま押し切る。豊島さんのスキのない指し回しが少し上回っている印象です。
9月のJT杯日本シリーズでも豊島竜王が勝利しましたが、藤井さんもこの1年でタイトルを取られるなどはっきり強くなっています。王将リーグ戦での対局もやはり楽しみなものになりそうです。
百折不撓の木村九段も期するものがあるはず
藤井二冠に王位を奪われる形となった木村九段にとっても、期するものがあるでしょう。まずこのリーグに入れたことは、今後の将棋を指すためのモチベーションにとって非常に大きかったと思います。
私自身も経験がありますが、やはりタイトルを取られた時には気持ちがガクンと落ちます。さらに王将リーグ戦入りができるか否か、という1局に敗れると……つらい思いが重なります。私たち棋士も人間ですから、気持ちが揺らいでしまうことはありますからね。
しかし木村九段はリーグ戦入りしたことで、王将戦への挑戦権に挑む、錚々たるメンバーと対局するというモチベーションを手に入れたのではないでしょうか。藤井二冠との対戦もありますから、ここで雪辱したいという気持ちは強いでしょう。
木村九段といえば「百折不撓」という座右の銘が非常にお似合いの方で、気持ちの面でも盤上でも“打たれても打たれても倒れない”、タフなところを見せてくれるでしょうね。普段のお人柄は爽やかで物腰も柔らかいですが、対局時の迫力は本当にすごい。そのギャップもまた木村九段の魅力なのでしょうね。