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大坂なおみに思い出す伊達公子の“箪笥” とは「記憶から試合中に引き出して」全米準決勝へ
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2020/09/10 19:00
最後は、サービスキープのラブゲームで勝利を掴んだ大坂なおみ。
ブレークバックにも挫けずに
序盤から得意の緩急で大坂を揺さぶったが、まずは第6ゲームで3度のデュースの末に大坂がブレーク。大坂が流れをつかむパターンだったが、次のゲームで40-15から3ポイント連取を許すなど、ブレークバックを許す。ファーストサーブを見事にとらえられてリターンエースを決められたのが連続ポイントの始まりで、最後はフォアのリターンエースだった。じっくり賢く攻めることもあれば、思いがけず勝負をかけてくることもある。ロジャースの怖さだった。
しかし大坂は挫けずに、すぐに次のゲームをラブゲームで再びブレーク。サービング・フォー・ザ・セットはエース、リターンエース、エース、リターンエースと両者が爆発力を見せたが、30-30からは大坂がアグレッシブなショットを畳み掛けて相手のミスを引き出した。
第2セットは第3ゲームをブレークし、あとはサービスゲームをまったく危なげなくキープ。ラブゲームのサービスキープで1時間20分の試合を締めくくると、派手なガッツポーズはおろか小さな握り拳すら作らず、静かに4強へ駒を進めた。
4年ぶりの対戦で「勝敗を分けた理由」
「ウィム(・フィセッテ)とじっくり作戦を話し合い、主導権をとって自分からショットを決めにいくことに専念した。いつもそうしているけど、今日は特にそうしないと、彼女に逆にやられてしまうから。ボールを真ん中に返さず、あちこちに散らして走らせる必要もあった」
そう明かした大坂だが、ウィナーの数は大坂24本、ロジャースが23本と互角だった。勝敗を分けた一因はアンフォーストエラー、つまり単純なミスショットの数だ。「このゲームプランだと、ある程度のアンフォーストエラーは受け入れないとしょうがない」と言いながらも、ロジャースの28本に対して大坂はその3分の1にも満たない8本に抑えている。相手の揺さぶりに対しても冷静さを保てた理由について、こう答えた。
「これまで、いろんな選手のいろんなボールを打ってきた経験だと思う。その記憶から試合中に必要なことを引き出しているの。意味わかってもらえるかな?」
正直言って、チャンピオン・レベルの人の感覚やマインドを本当にわかっているかと言われれば、わかっていないように思う。それでも、なんとか大坂の話を理解しようとしてふと思い出したのは、昔、伊達公子さんの恩師としてよく知られる小浦武志さんが言っていたことだ。