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大坂なおみ「正直、ちょっと楽しんで」全米決勝へ 隔離生活、激闘にもブレないハート
posted2020/09/11 20:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
全米オープン、そしてその前のウエスタン・アンド・サザン・オープンのために作られた<バブル>と呼ばれる大きな隔離空間に、大坂なおみが最初に足を踏み入れてから3週間以上が過ぎた。
ウイルスを持ち込ませない、広げないという徹底的な感染防止策がとられ、PCR検査は4日おきに実施され、携帯が義務づけられているID証はGPS機能付きで、無断で外に出れば出場停止の罰則があるという。大会直前にはフランスのブノワ・ペールの感染が確認されたが、濃厚接触者の1人だったクリスティーナ・ムラデノビッチは「私たちはまるで囚人」と語ったほどだ。
最後の1週間はメンタルの強さが
程度の差こそあれ、誰もがある程度のストレスは感じながら戦ってきた中で、今この時点でまだ<バブル>の中にいるのは、実力のみならず、この状況下でもっともうまくメンタルをコントロールできている選手たちなのだろう。大坂のコーチ、ウィム・フィセッテも4回戦が終わった翌日のリモート会見でこう話していた。
「外の世界と切り離されて、小さなホテルの部屋でもう3~4週間をすでに過ごしている。それは精神的にキツい。ここからの最後の1週間はメンタルの強さがすごく重要なパートになる」
最後にバブルを去るのは誰か。大坂は地元アメリカのジェニファー・ブレイディとの準決勝に挑んだ。
ブレイディはUCLA出身の25歳で、世界ランクは41位だが、今季はツアー中断までの2カ月の間に世界1位のアシュリー・バーティや5位のエリナ・スビトリーナといったビッグネームから勝ち星を挙げたジャイアントキラー。今大会も3つのグランドスラム・タイトルを持つ元女王アンジェリック・ケルバーを4回戦で破ってきた。
しかもここまで1セットも落としていない。ツアー中断の間に、「自分のポテンシャルを最大に引き出したい」と、新しいコーチとトレーナーのいるドイツへ渡り、トレーニングを積んできたという挑戦者は手強かった。