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錦織圭「1年ぶりの試合にふさわしい」逆転負け 本人が明かす完全復活までの距離感。
posted2020/09/09 20:00
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
AFLO
赤土の舞台に錦織圭が足を踏み入れると、センターコートの客席から拍手が起こった。白いヘッドバンドからは、コロナ禍の自粛期間中に伸びた髪がこぼれている。白いマスク姿ながら、鋭い目つきからは久々の実戦に懸ける強い思いが伝わる。
スキーリゾートとして知られるキッツビュールの会場は、新型コロナウイルスの感染予防のための入場制限に加え、平日の夕方前ということもあってか、錦織戦では異例の1割ほどしか客席が埋まっていない。
その一角には昨年から新コーチに就任したマックス・ミルヌイ氏が陣取り、メモ帳を手に気になった点を記録する準備をしていた。
昨年8月の全米オープン3回戦以来となる実戦復帰。主催者による大会前の公式インタビューで、錦織は率直な心境を語っている。
「1年試合から離れて、緊張だったりいろんな気持ちもありますけど、すごく楽しみです。ひとつひとつの試合を楽しんで、早く自分のいいリズムだったり、自分のテニスが戻ってくるように、1試合1試合を頑張って臨みたいと思います」
「やはり1年離れていると……」
昨年10月下旬の右肘手術から、10カ月以上が経過した。本人の公式アプリにたびたび投稿される最近の練習動画からは、本来の力強さや軽快なフットワークが戻りつつあることが窺えた。「楽しみ」という言葉を繰り返したのは、練習で手応えを感じているからだろう。
もちろん、1年ものブランクの影響が小さいはずがない。ほとんど症状は出なかったというが、新型コロナウイルスの感染から復帰したばかりでもあった。
復帰初戦の難しさは、本人も覚悟していた。
「やはり1年離れていると、なかなか自分の思ったようなプレーはできないと思うので、いろんな気持ちを楽しみながらプレーしたいなと思います」