“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
筑波大DF角田涼太朗、Jオファー殺到の希少価値と葛藤。「どのクラブを選んでも間違いはない」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/09/08 08:00
Jクラブの多くが注目する筑波大DF角田涼太朗(3年)。前橋育英高時代には全国制覇に貢献している。
流通経済大戦での2つのビッグプレー。
この試合、筑波大は2-1で勝利を収めるのだが、90分間を振り返ると流通経済大の猛攻の前に守勢に回る時間が長かった。
そんな苦境の中でも角田は最終ラインで常に首を振りながら、ボランチやサイドバック、サイドハーフを声でコントロールした。そして気迫のこもった守備、攻撃の起点となる瞬間を虎視眈々と狙い続ける。
すると、緊迫した試合展開の中で勝負の行方を分ける2つのビッグプレーを見せつけた。
1-1で迎えた68分。流通経済大MF満田誠がカウンターからドリブルを仕掛けると、角田はその正面に立った。右隣には味方のCBがいたが、そことは距離があり、さらにその間のスペースを狙おうとする相手選手の姿もとらえていた。つまり、1対2の数的不利の状況だった。
「ドリブルか間を通すパスを狙うかどちらかだと思ったので、右足を伸ばせるように準備をしながら、重心を左足に掛けて11番(満田)を誘い出した」
角田はドリブルを仕掛ける相手に対し、奪いにいく仕草を見せた。すると、満田がスルーパスを狙う。その瞬間、想定していた通りに右足を伸ばしてボールに触わり、パスカット。大きなピンチを頭脳と瞬発力、リーチの長さを駆使して防ぎ切った。
決定機の阻止、決勝点の起点。
続いて85分。自陣中央で筑波大ボランチの山内翔からパスを受けた角田は、前にスペースが空いていることを確認し、ボールをドリブルで運んだ。相手が食いついてきたことを見た角田はその瞬間に中央左寄りにいたMF瀬良俊太へ左足で縦パスを打ち込み、今度はそのままゴール前のスペースに走り込んでいった。
瀬良のパスを受けたFW森海渡はゴール前でフリーになった角田にパス。残念ながら相手DFに引っかかってしまったが、このこぼれ球を拾ったMF加藤匠人が豪快にゴールに蹴り込んで決勝弾が生まれた。
「前半から僕のところには常に(流通経済大の)2シャドーが斜めからのプレスを仕掛けてきて、なかなか前に行けなかった。でもあのシーンはボールが入った山内にプレスに行ったので、自分がフリーになり、ひとつ前のボランチラインに入ってボールを要求しました。時間帯的に試合終盤でどうしても点が欲しかった状況だったので、ファーストタッチで一気に前に出て、味方に預けてそのまま相手のゴール前まで出て行こうと思っていました」
決定機の阻止、決勝点の起点となるプレー。戦況をしっかりと把握した準備と予測がチームの勝利に直結した。
「高校時代はみんなで日本一を目指して勝ち取った。もちろんそれは今も変わらないのですが、(筑波大では)『目標達成に対する自分の立ち位置』をより明確に考えるようになりました。
それに、僕が入学するまでの筑波大はリーグ優勝、インカレ優勝、天皇杯ベスト16など結果を残しているのに、1年時は総理大臣杯に出られず、昨季はギリギリでインカレ出場権を掴んだもの、準々決勝敗退。天皇杯も今回、ようやく3年ぶりの出場権を掴んだ状況です。筑波大の一員として結果を出さないと胸を張れませんから」