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バイエルンなどブンデスクラブが考える、暑さ対策と子供たちの燃え尽き防止策って?
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/09/06 09:00
欧州王者になったバイエルンの育成組織は、夏のサッカー対策を綿密にとっている。
ブンデスの中高生は最低2週間夏休み。
子供たちはものすごく敏感で、度を越えた負荷は体にも心にも頭にも異変をもたらす。
加えて日本の夏は暑い。猛烈に暑い。日中は活動できないくらい暑い。
健康に対する知識は絶対的に必要だし、熱中症は誰にでも起こりうる危険があるという認識は持っていなければならない。氷を大量に準備したり、給水時間の頻度を多くしたり、日陰を作ったりという対処で、ある程度は活動が可能な状況を作ることはできるだろう。それでも日本の夏は、質の伴った練習をするには条件が極めて厳しい。
例えばブンデスリーガの育成機関においては、中、高校生年代でも最低2週間は夏休みを取る。小学生年代だと4週間取るところもある。
ドイツの育成指導者が考えること。
先日、CLで優勝したバイエルンだってそうだ。
ユースダイレクターのホルガー・ザイツは「子供たちを練習でしばりつけるのは彼らの成長を損ねることにしかならない」と話していた。あるいは、ドイツ国内で育成に定評のあるSCフライブルクのユースダイレクターであるアンドレアス・シュタイエルトは以前、こんなふうに語っていた。
「十分な休みを取ると子供たちはぐっと成長する。それは体が大きくなるといったフィジカル的な要素だけでなく、心を解放して過ごせる時間を持つことで、気持ちがとてもゆったりしてくるんだ。ストレスなく過ごせば、それが学習意欲にもつながっていく。でも、そういうこと以前に、子供たちが子供たちの時間を持つというのは、掛け替えのないものなんだよ。そればかりは、後で取り返すことができないんだから」
個人的にも、指導者は優先順位を間違えてはいけないと感じる。「強くなるために」「上手くなるために」「上のステージへ進むために」「大会で好成績を収めるために」、何をやってもいいわけではない。
「自分と向き合う。自分の限界を超える。自分の甘さと戦う」こと自体は大切だ。だからこそ、どう取り組むかを考えなければいけないし、大会後に燃え尽きることを美談として語る時代は終わりにしなければならない。