球体とリズムBACK NUMBER
なぜセビージャは“EL名人”なのか。
強烈な団結力とロペテギの男泣き。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2020/08/22 20:00
ロペテギ監督(中央)のもと、インテルとの激しいセットプレー合戦を制したセビージャ。UEFA杯を含むと通算6度目の“欧州制覇”だ。
歓喜のデヨングと涙のロペテギ。
画面越しから、得点後に会場の歓声が大きくなったように感じられたが、これはおそらく運営側の仕掛けではない。今大会、試合は無観客で開催されているが、準決勝の2試合を見ると、セビージャ戦だけ、選手たちをサポートする音が際立っていた。
欧州の報道によると、セビージャはサブ、コーチ陣、ドクター、フィジオ、フロント、そして会長を含めた少数の人々が、声の限りに歌い、声援を送り、激しく手を叩き、ありったけのノイズを生み出していたらしい。それは決勝でも同じだったはずだ。
「最高の気分だよ」とマンオブザマッチに選ばれたデヨングは語った。「大会を通して、タフな試合が続いたけれど、僕らはチームとしてよく戦った。家族のように(団結して)」
そして就任1年目でタイトルを手にしたロペテギ監督は、男泣きした。
若年層のスペイン代表にトロフィーをもたらしてきた指揮官は、2年前にキャリアの危機に見舞われている。スペイン代表指揮官としてW杯に臨む直前にレアル・マドリーの次期監督就任が明るみになり、本大会を目前にして代表監督の座を追われ、続くマドリーでも、シーズン開幕から3カ月ほどで解任されていたのだ。涙の理由は聞かなくても十分にわかる。
「レジェスやプエルタも含む……」
「我々はこのトロフィーを求め、そのためにハードワークを続け、自分たちを信じてきた」とロペテギ監督は試合後に話した。「うちのアンセムは『このチームは絶対にギブアップしない』と歌うが、まさにそうだ。これは誰もが互いを助け合った結果だ。私は本当に幸せだよ。この勝利は、いかなる時もクラブをサポートしてくれたサポーターたちのものだ。
そして(故人のアントニオ・)レジェスや(同じく故人のアントニオ・)プエルタを含む、このクラブを愛する人々全員に捧げたい」
過去にはセルヒオ・ラモスを輩出し、ディエゴ・マラドーナやダニエウ・アウベスらもプレーしたスペイン南部の雄が、その長い歴史にまたひとつ勲章を加えた。6度目のヨーロッパリーグ制覇──まぎれもない偉業だ。