球体とリズムBACK NUMBER
なぜセビージャは“EL名人”なのか。
強烈な団結力とロペテギの男泣き。
posted2020/08/22 20:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
UEFAヨーロッパリーグ決勝
セビージャ 3-2 インテル・ミラノ
この大会で最多優勝回数を誇るセビージャが、インテル・ミラノとの壮絶なファイナルを制して、その記録を6に更新した。相手はここ6試合の公式戦を全勝、その間に16得点1失点を記録し、準決勝ではシャフタール・ドネツクに5-0と圧勝していた。
そんな風にピークを迎えていたインテルから、セビージャが逆転勝利を収められた要因は、クラブとしての伝統と経験、団結力、そして何よりもこのタイトルへの熱い想いにあったと思う。
あらためて述べるまでもなく、ヨーロッパリーグ(前身はUEFAカップ)はUEFAにおけるチャンピオンズリーグに準ずる大会だ。エリート中のエリートクラブには馴染みが薄いし、優勝賞金はチャンピオンズリーグの半分以下。チームや選手によっては、この大会を軽視する向きもある。
「ELのカップの感触、抱擁には」
だがセビージャは違う。彼らはトロフィー──CLではなくとも、れっきとした欧州のタイトルだ──に触れる喜びを知っており、何度でもそれを味わいたいと願っているのだ。
「あの金属の感触や、カップとの抱擁には、格別なものがある」とセビージャのホセ・カストロ会長は決勝の前に、英『ガーディアン』紙に語った。
「それは筆舌に尽くしがたいものだ。このチームに新たに加入した選手には、会長自ら(5つの)ヨーロッパリーグのトロフィーを見せ、我々にはこれがもっと必要だと伝えている」
1890年に創立されたセビージャは、スペインでもっとも長い歴史を誇るクラブのひとつだ。1945-46シーズンに一度だけ1部リーグを制したアンダルシアの名門も、もちろんチャンピオンズリーグでの栄光を夢見ている。
しかし、「そこに出場するクラブを見れば、現実的に(優勝は)不可能だ」(カストロ会長)。資本主義が進みすぎた現在、優勝経験のないチームがチャンピオンズリーグで成功するには、アラブの国家ファンドやオリガルヒのパトロン、レバレッジド・バイアウト(LBO)が必要になるような世界だ。