球体とリズムBACK NUMBER
「カオス」で攻守無双バイエルン。
PSGとのCL決勝は垂涎の展開必至。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2020/08/21 11:50
攻守一体の規律を保つのは現代サッカーで勝つためには必須の条件だ。バイエルンはそれをまさに体現している。
「カオスを生み出す」戦法で勝負。
「向こうが5バックで来れば、(自分の前の)裏のスペースが空く。うちはそこを狙い、多くの場合、成功した。それが前半のカギだった」と得点者自身が試合後に語ったように、バイエルンはリヨンのサイドの裏のスペースに狙いを定めていた。
ただしその手法は、緻密なパスワークから崩していくものではなく、中長距離のボールを入れて、一度目で奏功しなければ、即時に奪回し、次の攻撃に繋げていくやり方だ──ユルゲン・クロップ監督の言葉を借りれば、「カオスを生み出す」戦法となる。
先制点は1度目のフィードがそのままゴールまで繋がったものだが、追加点はまさしく混沌を生んだ後に奪い返して、二次攻撃でゴールを陥れている。
33分、左に開いたCBダビド・アラバがニャブリをめがけて対角線のロングフィードを送る。少し距離が足りず敵にカットされるも、すぐにニャブリが奪い返して再びスクエアのドリブルを開始。
中央まで進んだ時、今度はシュートではなく、左のイバン・ペリシッチへ渡し、そこからダイレクトで折り返しが入る。ファーサイドのロベルト・レバンドフスキがこれを押し込み損ねると、こぼれ球をニャブリが詰めてリードを広げた。
「最後にはいつもドイツが……」
バイエルンにとって、流れが良かったとは言えない前半も、終わってみれば、スコアは2-0。今のバイエルンを見ていると、ギャリー・リネカーのあの有名な言葉──「フットボールはシンプルなゲームだ。22人の選手たちが90分間を戦い、最後にはいつもドイツが勝っている」──が聞こえてくるようだ。
後半には、GKノイアーがトコ・エカンビの至近距離のシュートを防ぎ、終盤の88分にはキミッヒのFKにロベルト・レバンドフスキが頭を合わせて加点。31歳のポーランド代表FWは今大会の出場全試合得点をキープしてトータル15得点とし、クリスティアーノ・ロナウドが持つ1シーズンの大会記録(17得点)が見えてきた。
パリ・サンジェルマンとの決勝でハットトリックを達成すれば、新記録を樹立することになる。