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ネイマールも絶賛したアタランタ。
地方クラブの夢物語は終わらない。
posted2020/08/20 20:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
「ピッツァを1000枚、ファンに喜んで奢るよ!」
もしチャンピオンズリーグで優勝できたら? と問われたアタランタのMFデローンは、リスボンでのCLファイナル8トーナメントを前に、そう宣言していた。
アタランタはパリSGとのCL準々決勝に臨み、1-2の逆転負けによって劇的に散った。だが、初出場の彼らが大会に残した印象は鮮烈だ。
グループリーグ開幕3連敗後の大逆転突破は現行の大会方式で初の快挙だった。さらに、“初出場・初決勝トーナメント”を達成した2度目のイタリア勢という勲章も得た。
新型コロナウイルスが欧州を直撃した2月のラウンド16では、通算スコア8-4でバレンシアを撃破。イタリア王者ユベントスとナポリがともにラウンド16で敗れたことで、唯一のイタリア勢となったアタランタへの期待は俄然高まった。
ネイマールの年俸≒チーム年俸総額。
ただし、準々決勝の相手は石油マネーによる巨大戦力を誇るフランス王者のパリSGで、知名度も資金力も彼我の差は歴然だった。
端的にいうと、ネイマール1人の年俸3600万ユーロ(税込)はアタランタ選手“全員”の手取り合計額と同じだ 。アタランタの年俸総額はボローニャやジェノアよりも少ない。
パリの巨人に挑むアタランタは、大黒柱のFWイリチッチに加え、正守護神ゴッリーニも直前の故障で欠いていた。下馬評は圧倒的不利だった。
しかし、“戦術の鬼”ガスペリーニが鍛えに鍛え上げたチームが今さら怯むはずがない。相手陣内でショートパスをつなぎながら攻め続ける“ハイリスク・ハイリターン”の攻撃スタイルを敢行したアタランタが27分、パリSGゴールを陥れた。先制点を挙げたのは、イリチッチの代役として先発したパサリッチだ。
追うパリSGはセンターラインのプレスを厚くしたことにより中盤が拮抗、ゲームは引き締まった展開のまま後半へ突入した。だが60分、ムバッペの投入で流れが一気に変わった。空気と化していたイカルディはさておき、異次元のスピードで縦に突っ込む怪物を傍らに得たことで、それまで抑え込まれてきたネイマールも勢いを取り戻した。
残り30分を切って、スコアは1-0(ウノ・ア・ゼロ)。アタランタは防戦一方になった。