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「悲壮感のない甲子園」を初めてみた。
もしかすると本当はこの形の方が……? 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byNaoya Sanuki

posted2020/08/22 08:00

「悲壮感のない甲子園」を初めてみた。もしかすると本当はこの形の方が……?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

観客席がガランとしている分だけ拍手や手拍子はクリアに聞こえてきた。高校野球の原型を見た思いだ。

スカウトも、選手の家族にも人数制限。

 そのほかの「ネット裏の住人」はプロ野球のスカウトの方たちだ。

 この夏は、1球団2名という制約があるそうで、いつもの夏なら、100人を超えるスカウト大集合となるところが、今年はその5分の1にも満たない。

 一塁側と三塁側のスタンドには、試合をする学校の野球部員たちと、家族の方たちの姿が見える。やはり、1家族5人までという制約があるという。

 学校によっては、3年生の部員しか応援に来ていないチームもあって、おそらく、来るべき「秋」に備えて、新チームの1、2年生たちは地元で練習試合に励んでいるのだろう。

 アルプススタンドの代わりに緑の山々が遠くにのぞめるグラウンドで、真っ白い土ぼこり舞い上げて、駆け回り、ボールを追いかける新チームの球児たちの姿が、想い浮かぶ。

 そうだ、日本じゅうで、もう高校野球の「秋」が始まっているんだ……。

試合の真剣勝負さは変わらない。

 試合が始まる。

 選手の名前を呼びあげる甲子園独特のアナウンス。関西のことばのニュアンスが語尾にちょっとにじんだ語り口が、「いつもの甲子園」に戻してくれる。

 それでも、観客の名前を呼びあげて、「6号門までお出ましください」のアナウンスは、今年は聞かれない。

 それでも試合が始まってしまえば、いつもと変わらないガチの真剣勝負だ。

 猛烈な勢いでボールを弾くリリースの瞬間に、大人顔負けのスイングスピードでボールを捉えるインパクトの一瞬に、激しい火花が散りまくる。

 ブラスバンドの応援はないから、この夏は「手拍子」が頼りだ。

 1拍子あり、独特のリズムをつけた手拍子あり……そんな中で、ありそうでなかったのが「三、三、七拍子」だ。その昔は、応援の定番だったあのリズムは、いつから消えてしまったのか。妙なところで「時代」を感じて、ひとり笑ってしまった。

【次ページ】 手拍子はなんだか胸にグッと来る。

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