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戸張捷が語る「観るゴルフ」の現状。
ツアーの権利と義務を見直す時代に。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2020/08/24 07:00

戸張捷が語る「観るゴルフ」の現状。ツアーの権利と義務を見直す時代に。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

キャスターとして多くの名場面をお茶の間に届けてきた戸張捷氏。現在、ゴルフ界が直面している問題に対し、率直に語った。

米国はツアーが、日本は今も民間主導。

 1973年に始まった男子フジサンケイクラシックに代表されるように、創成期はゼロからのスタート。開催地域との折衝、出場選手の資格決めから、メディアを交えた大会プロモーションなど仕事は多岐に渡った。戸張氏がキャスターを務めるようになったのも、「当時はテレビ放送をしようにも、現役からリタイヤして解説できる人がいなかった。必然的に試合を作った人が話すことになってしまった」という流れである。

「そもそも、日本女子オープンも1968年にオープンした埼玉のTBS越谷ゴルフクラブの開店イベントだった(TBS女子オープン)。その後、当時の日本ゴルフ協会会長が『日本女子オープンとして譲ってほしい』と歴史も買い取ったようなかたち('71年から)になった。要するに、日本のトーナメントは“民間主導”なんです」

「権利と義務、責任分布をどう守るか」

 協会、ツアーを「官」としたときの、「民」であるスポンサー企業がリードしたプロゴルフ。そもそも米国でも、1960年代頃まで人気は乏しく、主にゴルフ好きの映画監督やハリウッド俳優らがプロを慕ってイベントを開催したのをきっかけに発展した試合もある。

 だが、米国では歴史を重ね、主導権をツアー側が握るようになった一方で、日本は今も「民間主導」が色濃い。年間スケジュール全体を見渡すツアー(官)のビジョンではなく、各大会のスポンサー(民)事情が反映されやすいがゆえに、シーズンの動向が安定しない。

「例えばPGAツアーでは、開催の1カ月前に(7月の)ワークデイチャリティオープンの実施を決めた。PGAツアーにマーケティング能力があるからこそ。だが、仮にうまくいかないと米国では『責任を果たしていない。コミッショナーは辞めろ』という声が上がる。トーナメントを増やす、減らすでトップの給料が変わり、任期も変わる。やったこと(やらなかったこと)に対する責任を誰が持つのか明確なのがPGAツアー。そこが日本と成立過程で違う。男子も女子も権利と義務、責任分布をどう守るかを考える時期に来ているのでは」

【次ページ】 放映権問題がややこしい理由。

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