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戸張捷が語る「観るゴルフ」の現状。
ツアーの権利と義務を見直す時代に。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2020/08/24 07:00

戸張捷が語る「観るゴルフ」の現状。ツアーの権利と義務を見直す時代に。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

キャスターとして多くの名場面をお茶の間に届けてきた戸張捷氏。現在、ゴルフ界が直面している問題に対し、率直に語った。

放映権問題がややこしい理由。

 ツアーの「権利と義務」という話に関連すると最近、女子ツアーでは“放映権”の問題がややこしい。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が、権利がツアーに帰属することを主張し、スポンサーや放送局と押し引きが続いている。戸張氏が日本の放送スタイルの「成立過程」を説明する。それは、他国のツアーや他のスポーツ団体から、放送局が権利を買って放送するという一般的な図式とは異なるものだ。

「ゴルフ中継はもともと“パッケージの営業商品”。スポンサーがお金を出して、テレビ局に撮って(放送して)くださいとお願いするもの」。いわば、2時間近いCMである。「だから、試合終了まで放送できるようディレイ(録画放送)が当然だった」と言う。

「当時(AONが台頭した'70年代中盤)は女子プロの『じょ』の字もなかった。試合が少なく、樋口久子も米国へ行った。正直に言えば……、少なくとも当時はまだテレビ向きでなかった。テレビ局側は土日の昼間の枠で、視聴者が見たくないようなコンテンツはイヤだというのが、本来のスタンス。だからスポンサー側が局に依頼して、コマーシャル枠も買って放送してもらっていた。だから放映権そのものが生じなかった」

「小林さんの立場だったらそう言いたい」

 時は流れ、小林浩美会長以下JLPGAは新たにインターネット中継を政策のメインに据えて、権利の“獲得”を目指している。

「小林さんの言っていることは分からないでもない。私も彼女の立場だったら、そう言いたいと思う。時代は変わった。女子ゴルフ人気が高まった今だからこそ、話をそう持っていきたい。ただ、土壌をドラスティックに変えようとすると摩擦が起きる。いきなり『放映権をください』と言われ、テレビ局は面食らってしまった。過去を学び、その中でどう変革させるのがベストかを探るべき。日本はメジャーとコマーシャルトーナメント(平場のスポンサー大会)の在り方が完璧に分かれている。そこを十把一絡げにして考えると難しさがある」

 見方によっては戸張氏が従来の放送形態を守ろうとしていて、JLPGAの“抵抗勢力”のようにも映る。実際はそうでもない。権利の帰属先はさておき、近年、自身がゼネラルプロデューサーを務める男女フジサンケイクラシックは地上波、BS、CS放送を駆使し、生中継を行っている。

【次ページ】 録画中継は「変だもん(笑)」

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