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戸張捷が語る「観るゴルフ」の現状。
ツアーの権利と義務を見直す時代に。

posted2020/08/24 07:00

 
戸張捷が語る「観るゴルフ」の現状。ツアーの権利と義務を見直す時代に。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

キャスターとして多くの名場面をお茶の間に届けてきた戸張捷氏。現在、ゴルフ界が直面している問題に対し、率直に語った。

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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Yoichi Katsuragawa

 多くが彼の人で知るところは、テレビから流れてくる“声”だろう。

 全米、全英オープンといった男子メジャーをはじめ、国内男女の大会でも、テレビ放送席の一員を務める戸張捷(とばり・しょう)氏。2019年にはAIG全英女子オープンでは渋野日向子の歴史的1勝をお茶の間に届け、今季の大会もキャスターとして中継に参加している。

 ただし、そのゴルフキャスターという仕事は、実は戸張氏の本業の一面にすぎない。プロのツアー大会を企画運営するトーナメントプロデューサー、日本ゴルフ協会の常務理事、プロゴルファーをサポートするマネジメント会社トップ……。はたまたゴルフ場のコンサルティングや、コースの監修も手掛けるなど様々な顔を持っている。

 新型コロナウイルスはゴルフ業界も一変させた。とくに「観るスポーツ」としてのツアー大会は世界中で一時的に中断され、夏場の再開後も無観客での開催が続いている。

 ニューノーマル、アフターコロナにウィズコロナ。昨今、各業界で新様式の在り方を問うのは、ビフォーコロナの検証作業だ。これまで社会で常識とされていたことから、ムリ、ムダ、ムジュンも浮かび上がらせてもいる。半世紀にわたってプロゴルフ界の潮流をつくり、眺めてきた人はいまとこれからをどう見るのか。言葉からは業界の成り立ちと、直面している問題が垣間見える。

ゴルフは「ユニバーサルジョイント」。

 前提として、戸張氏は「人々がゴルフ場でプレーをすることと、プロゴルフは違う」として、「プレーするゴルフ」と「観るゴルフ」は別物として捉えている。

「新型コロナが全地球的にスポーツ環境を害すなかで、(プレーする)ゴルフは比較的ラッキーだと思う。人と人との接触から伝播するウイルスを相手に、“密”になりにくく、社会的距離を保ってできる屋外の遊びは極めて少ないが、ゴルフはその部類に入る。英国、米国でも一時的にロックダウンしたコースも緩やかにオープンされ、本当にありがたく思う。ゴルフは“ユニバーサルジョイント”。バスケット選手、テニス選手、野球選手……あらゆるアスリートも楽しむことができる。アマチュアも老若男女がプレーできるところが、他のスポーツとは違う」

 米国ではシーズン中断中の5月末、タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンがNFLのペイトン・マニングとトム・ブレイディを招いてチャリティマッチを開催した。体のぶつかり合いなしに、アスリート同士も競演できるという魅力も引き出しつつ、ゴルフの安全性(コロナ禍に適したプレー方式が求められるのは当然)をアピールする機会にもなった。

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