野球クロスロードBACK NUMBER
聖光学院が見せた真の高校野球。
幻の14連覇と新たな歴史の始まり。
posted2020/08/20 08:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
本当なら聖光学院が成し遂げた記録は、高校野球の歴史に燦然と刻まれるはずだった。
2020年、8月7日。
福島大会の決勝で光南を6-0で破り、聖光学院は'07年から座る「夏の王座」を死守した。
もし、「夏の甲子園」と呼ばれる第102回全国高校野球選手権大会が開催されていたのであれば、戦前に和歌山中(現・桐蔭)が打ち立てた“14連覇”に並ぶはずだった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、甲子園と代表校を決める地方予選が中止となったことで、戦う前からその偉業を達成することは不可能になった。
とはいえ、独自大会ながら、ほぼ従来通りのルールで行われた福島県大会を14年連続で制覇した事実に変わりはない。
「甲子園があったのなら、どういう試合になるのか見てみたかった。それくらい、かっこいいチームになってくれた」
聖光学院の監督、斎藤智也は目じりを下げながら“14連覇”を称えた。
聖光学院の野球をやり切った。
その「かっこよさ」は、県大会に続いて開催され、全国唯一の地区大会となった東北大会でも不変だった。
仙台育英との決勝戦。1-0の5回、相手監督の須江航が「うちでコントロールが一番いい」と評する2番手の阿部恋から、3四死球とボールを見極めるなど、この回に大量6得点。昨年の夏から「東北無敗」の王者に8-0で勝利し頂点に立った。聖光学院は、1度も敗れることなく2020年の夏を終えたのだ。
優勝後の囲み取材。斎藤は感慨深げだった。
「一番いい終わり方でしたね。『コロナに負けず踏ん張ろう』と、苦境でも逃げずに聖光学院の野球をやり切った結果でしょう。選手たちが誇らしい。もうちょっとこの子らと野球をやりたかったくらいです」
今年の聖光学院は、強かった。