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内村航平“鉄棒専念”で金メダル?
白井健三、萱和磨が抱く信頼感。
posted2020/08/08 11:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
2004年アテネ五輪から'16年リオデジャネイロ五輪までの五輪4大会において、体操ニッポンの男子は団体総合で金2、銀2のメダルを獲得してきた。
その中の3大会(北京・銀、ロンドン・銀、リオ・金)でメダル獲得に貢献してきた内村航平が今夏、種目別の鉄棒のみに絞って東京五輪の出場権獲得を目指すと表明した。
内村は、ロンドンとリオでは団体予選と団体決勝の各6種目をすべて演技して日本を引っ張った。若手にとっては目指すべき存在であり、世界の評価基準を示してくれる選手であり、お手本でもあった。
体操ニッポンのど真ん中で先頭を歩んできた内村の決断を、東京五輪の団体金メダル獲得を目指す選手たちはどのように受け止めたのだろうか――。
内村は白井に「体操は6種目やってこそ」と。
'13年秋、ベルギー・アントワープで開催された世界体操選手権。高校2年生で初出場した白井健三の名は、一躍世界中に知れ渡るところとなった。
17歳という若さで種目別ゆかの金メダルを獲得したから、だけではない。ゆかで2つ、跳馬で1つ成功させた世界初の技に、「シライ」「シライ2」「シライ/キムヒフン」と自身の名が次々とついた。
それまでの常識を覆す4回ひねりをいとも簡単にこなし、つけられた愛称は「ひねり王子」。ニックネームは各国の言語に翻訳され、メディアを賑わせた。
ゆかと跳馬のスペシャリストとして世界に躍り出た白井に、「体操は6種目やってこそ」と言い、オールラウンダーへの転向を促したのが内村だった。
ともに天才肌で、ひねりの技術に関しての繊細な感覚を共有することのできる2人は、次第に師弟のような関係になっていった。