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ブンデス歴12年の敏腕がJを変える。
長崎の執行役員・瀬田元吾の熱い志。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

PROFILE

photograph byGengo Seta

posted2020/08/07 11:30

ブンデス歴12年の敏腕がJを変える。長崎の執行役員・瀬田元吾の熱い志。<Number Web> photograph by Gengo Seta

ドイツ在住時代も両国のサッカーをつなごうと奔走した瀬田元吾氏(中央)。V・ファーレンでどのような改革を打ち出すのか。

ブンデスの運営を理解するために。

「各部署はドイツ人が担当しますが、事前に入念な打ち合わせをして、講義もすべて日本語に訳して行います。ドイツは役割分担がはっきりしているので、担当外のことは話さないことが多いんです。

 でも、オーガナイズの中に日本人が入れば、学生たちの理解度を高める仕組みを作ることができる。僕は日本デスクとしてフォルトゥナの各部署とつながりを持って取り組んできたので、各部署の専門スタッフに説明してもらえるんです。そういう視点で受け入れる側が準備しておくことが、学生たちがクリアにブンデスの運営のベーシックを理解するために重要なことだと思っています。

『そういうことなんだ』と納得して感じてもらえる。プロクラブのマネージメント入門編を理解することで自分の強み、興味が、よりくっきりと見えてくるんじゃないか。クラブへの見方、正しい視点、評価につながってくる。メリットとデメリットの関係性が見えてくるはずです」

 カレッジパートナー契約は現在2年間だが、中大もフォルトゥナも、長期的に続けていけるように前向きに考えているという。フォルトゥナは国際化に向けての第一歩として日本を重要視しており、カレッジパートナーのロゴは日本でしか使わない限定デザインを使用している。

 またカレッジパートナー契約締結のニュースはクラブホームページのほか、スタジアムマガジンでも取り上げるなど注目度の高さを感じさせる。

後に続く人が学びやすい環境を。

 このプロジェクトで学んだ学生が、もしかしたら“フォルトゥナで仕事がしたい”となるかもしれない。あるいは日本へ帰ってアウトプットする。そんな流れができることを、瀬田は願っている。

「僕はブンデスリーガにおいてこの分野の専門として12年間やってきました。でも、僕1人で情報を得て、それで良くなって終わりではなく、切り拓いてきた道の整備、舗装作業をやって、後に続く人が学びやすい環境を残していけたらと思っています」

 クラブ間のマーケティングも、人と人のつながりも、町同士の関係性も、受け取る側の理解で取り組み方が変わってくる。狭い視野ではわからないこと、自分の常識だけでは気づけないことも多い。ドイツ文化的な感覚と考え方、日本文化的な感覚と考え方をバランスよく持つ瀬田のような人材は、どちらにとっても、新しい価値あるアイディアをもたらせる存在といえるだろう。

【次ページ】 8月からJ2長崎の執行役員に就任。

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瀬田元吾
V・ファーレン長崎

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