欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ブンデス歴12年の敏腕がJを変える。
長崎の執行役員・瀬田元吾の熱い志。
posted2020/08/07 11:30
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Gengo Seta
5月26日、当時ブンデスリーガ1部に所属していたフォルトゥナ・デュッセルドルフが、中央大学商学部とカレッジパートナー契約を締結したことを発表した。
これまで欧州プロクラブとJリーグクラブ間の提携はあったが、大学との提携は聞いたことがない。そもそもどのような経緯でこの話は浮上してきたのか。メディアでは「提携した」という事実だけがクローズアップされがちだが、前例のない話だけに、その背景や経緯を知ることで、関係者の狙いと願いに耳を傾けてほしいと思う。
今回のパートナー契約を実現したのが1人の日本人、瀬田元吾である。
瀬田は2005年に単身ドイツへ渡り、'08年にフォルトゥナのフロント入り。日系企業とのスポンサー契約、日本人選手の獲得、現地の日本人コミュニティとの関係構築など、数々の実績を積んできた。
そうしてドイツ最前線の現場で働く中、瀬田は日本のサッカー界に危機感を感じていた。
サッカービジネスというものがもっと確立されて、日本でもベースとなるお金が増えてくるようにならないと、サッカー環境の充実も、トップレベルの水準も上がってこないのではないか――。
特に後発的にプロリーグを作り、ビジネス化に成功して成長し続けている日本において、サッカーは他のスポーツに対するモデルケースとなっていかないといけないはずだ、と。
スポーツマネジメントの需要と供給。
瀬田は現地の正しく有益な情報をクリアに伝えるために、テレビ出演や雑誌インタビューに応え、自身でコラムも執筆していた。
また、定期的に日本へ足を運ぶようになると、専門学校で授業をしてほしいと頼まれるようにもなった。そして、学生たちと接する中でスポーツマネージメントに興味を持っている学生が増えてきていることに気づいたのだという。
「需要が大きくなっているのを肌で感じました。少子化で学生数自体は減ってきている中で、学生が求めていることに変化が生まれている。大学側も彼らの需要に応えるため、スポーツマネージメント学科を作るなどしていますが、話ができる講師が足らない。だから、いろいろな大学が現場のことを知る人間を必要としているのです」