欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ブンデス歴12年の敏腕がJを変える。
長崎の執行役員・瀬田元吾の熱い志。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGengo Seta
posted2020/08/07 11:30
ドイツ在住時代も両国のサッカーをつなごうと奔走した瀬田元吾氏(中央)。V・ファーレンでどのような改革を打ち出すのか。
中央大教授、東京23FCとの提携。
ただし、単発的な講座ではどうしても部分的なことしか語ることはできないし、それだと学生にも本当に大事なところが伝わりにくい。伝え方や伝える場所、環境を変えていきたい。
それなら日本の大学院でアカデミックな論文を書いて、自身のステータスをより高めていくべきだ。そう思って模索し始めた頃に、中央大学商学部の渡辺岳夫教授(現学部長)と縁あって知り合うことになる。
思いを伝えると「ぜひ、中大で論文を書いてほしい」と話が進み、中央大学企業研究所の客員研究員のポストにつくことができた。
渡辺教授はもともと学生たちとのゼミ活動のひとつとして、Jリーグ入りを目指す東京23FCという関東リーグ所属のクラブと提携してホームゲームの「5000人プロジェクト」などを実践していた。どうやって地域の人を盛り上げて、集客していけるのかを実地で学ぶことが目的だ。
Jクラブを巻き込んでの特別講座。
瀬田は学生たちが現場のことをよりダイレクトに学べる環境を作れないかと考え、Jリーグクラブを巻き込んでの特別講座開催の可能性を探った。いろいろなJクラブのスタッフを招いて、担当者にインタビューをして、学生がそのクラブを評価するという形を提案した。
都市クラブと地方クラブの違いは?
激戦地区だと何が大変なのか?
親企業がついているクラブとついていないクラブとでは、経営上どんな差があるのか?
スタジアムは自前なのか、行政から借りているのか?
クラブの歴史は?
どんな背景や視点で運営されているのか?
いろいろな角度から学生がリサーチしていった。
「そうすると、観客動員数のリストだけでは見えないことに気づけるんですね。スタジアムのキャパシティに対する稼働率はどうかとか、それを上げるためにどんな活動をしているのかとか、いろんな視点でアナライズしてもらうのが狙いでした。彼らはなんとなく聞いているようで、しっかりと感性が刺激されているんです。もちろん全員というわけではないですけど。いろんなクラブの話を聞いていくと、あれ? と感じるところも出てくるんです」