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西武リリーフ陣の安定感はどこから?
ブルペン事情を豊田コーチに聞いた。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/08/06 11:50
15試合に登板し防御率0.59と、ここまで抜群の安定感を誇るギャレット。豊田コーチは「選択肢」が増えたことを好調の要因と語った。
豊田コーチ「真っ直ぐで押せる」
ギャレットについて豊田コーチは言う。
「春のキャンプとオープン戦で見る限りは、ボールが抜ける場面が多々ありました。そこで抜けるのを防ぐため、フォームを修正してほしいと伝えました。アメリカで投げていたときは、フォアボールの数も多かったようなのですが、もっとストライクゾーンで勝負ができるよう考え方も修正してもらいました。本人は持ち球のストレートとツーシーム、パワーカーブを武器に、これまでは打たせて取るイメージでやってきたようです。
でも彼のストレートは力強いし、日本の公式球はメジャーのボールとは違うのでスピードも出る。真っすぐで押せるパワーピッチャーだと僕は思いました。その印象をギャレットに伝えて、まずはストレートのパワーで押せるピッチャーになってほしいと伝えました」
同時にリリーフとしての登板を期待していること、そのためには「とにかくストライクゾーンで勝負してほしい」ことを伝えたと語る。
結果、初球から155km近い速球でどんどんとストライクを取っていく、現在のギャレットの投球スタイルが生まれた。“日本のスタイル”に合う投手へと生まれ変わったのである。
展開に合わせた明確な投手起用。
そして今シーズン、目立つのは僅差でリードしている試合、大量リードをしている試合、僅差でリードを許している試合、大量得点差でビハインドの試合と、展開によって投げる投手を明確に分けている点だ。
辻発彦監督と西口文也投手コーチによる判断だと豊田コーチは語る。ともすればモチベーションを保ちづらい大量ビハインドの場面でマウンドに行くピッチャーは、長い目で見れば、実は勝ちパターンと呼ばれる投手のコンディションを保つためには一番重要な役割を担っている。
「大量ビハインドというのは最もピッチャーにとっては過酷な状況だと思います。相手打者がリラックスした状態で、思い切りバットを振ってくる。それに対して、こちらは若手とか、まだ経験が浅い投手が投げるので、しっかり抑えること自体がとても難しい。ですから、そういうときの考え方や気持ちの持ち方などはそれぞれのピッチャーに伝えています。
そしてシーズンの終盤、勝ちパターンと言われている投手たちが疲れて、彼らを休ませなければならなくなったときに、今はビハインドの場面で投げているピッチャーが、たとえ1アウトでもいいから取ってくれるようになってほしい。なんとかレベルアップをしてほしいという思いでいます」