サムライブルーの原材料BACK NUMBER
読むとなぜか元気に。失明危機の
フットボーラー・松本光平の告白。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYuki Suenaga
posted2020/08/06 20:00
朗らかにインタビューに応じた松本だが、左目の視力はかなり落ち、右目はほとんど見えない状態だ。
「別に頑張ってはないんで(笑)」
それでも白い杖を使って何とかまっすぐ歩けるようになると今度は早歩きに入る。近くの公園でやってみるのだが、これも右に傾いたり、こけてしまったり。そうやって少しずつ感覚をつかんできた。
大変なのに、一切大変そうには見せない。
「頑張ってるって言われるんですけど、手術終わってからは寝ているだけでしたから別に頑張ってはないんで(笑)。頑張らなくちゃいけないのはこれからなんで」
ニュージーランドから帰国後は病院近くに住んでいたが、陸上トラックのある公園が近いマンスリーマンションに引っ越すことにした。
今の視力に慣れてジョギングもこなせるようになれば「9月末には軽いコンタクトもOKになると思います」。本人のなかではCWCにギリギリ間に合うという計算だ。
ダービッツのようなゴーグルを発注。
視覚障害を持った世界的なプレーヤーに、エドガー・ダービッツがいる。緑内障を発症して手術後に目を保護するためにゴーグルをつけてプレーした。
松本も競技用のゴーグルを既に発注しており、視界も良くなるのではないかという期待も持っている。
元スコットランド代表で中村俊輔のいたセルティックで指揮官を務めたゴードン・ストラカンは右目の視力障害を抱えながらもイングランド年間MVPを獲得したという出来事も松本を奮い立たせている。
同じ境遇の人からメッセージをもらうようにもなった。
「3年前に右目の眼球破裂にあったという子供さんからメッセージをもらって、3年掛けてサッカーができるようになった、と。子供が頑張っているんだから大人の自分も頑張らなきゃダメでしょって思いますね。ほかにもたくさんメッセージをいただいて、凄く勇気になりますね」
絶望を寄せつけることなく、有望を呼びつける。
その鉄の意志は、サッカーが授けてくれたものにほかならない。
(後編「片目が見えなくても超ポジティブ。松本光平、『何とかなる』の原点」は下の関連記事からご覧ください)