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読むとなぜか元気に。失明危機の
フットボーラー・松本光平の告白。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byYuki Suenaga

posted2020/08/06 20:00

読むとなぜか元気に。失明危機のフットボーラー・松本光平の告白。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

朗らかにインタビューに応じた松本だが、左目の視力はかなり落ち、右目はほとんど見えない状態だ。

筋力が落ち、ベストの体重から12㎏減。

 2週間を終えても、今度は逆に仰向けになって絶対安静。結局1カ月以上、ベッドから動けない生活を続けた。

 事故当時と見え方はそう変わっていない。

「右目はほとんど見えてなくて、左目はぼやけながら何となく見えるかなっていうレベル。水に浸かってモノを見ている感じに近いです」

 絶対安静が解けると、体が細くなっていることにあらためて気づかされた。筋力が落ち、ベストの体重から12㎏落ちていた。だが手術を受けてようやく復帰への一歩を踏み出せたことで執刀医に「早くサッカーをやりたいです」と告げた。

 あきれ顔というよりも「明らかに怒り顔」。

「そんな状況じゃないでしょって言われました。何言ってんだ、この人はっていう感じですよね(笑)。でもぼんやり見える左目だけでもサッカーはできるし、無理じゃないですって伝えて、(経過週ごとに)何週目になったら始めていいものを紙に書いてもらって。それでまずはまっすぐ歩くことから始めたんです」

歩くだけで乗り物酔いのような感覚に。

 傷の程度が右目に比べれば軽い左目を手術する案もあったが、「こちらは何回か手術しなきゃいけなくなる」ため、そうなるとCWCに間に合わない。

「あまり見えない状況であってもサッカーすることに慣れちゃったほうがいい」

 今の視力レベルでプレーできるまでに持っていく。それが彼の出した結論であった。

 まっすぐ歩く。

 しかしこれが簡単じゃない。どうしても右に傾いてしまう。視力や視界のバランスが崩れているため、歩くだけで乗り物酔いのような感覚になるという。気持ち悪くなって吐いたことも二度三度じゃない。

【次ページ】 「別に頑張ってはないんで(笑)」

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