ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
ベイスターズ柴田竜拓の打球が違う。
筒香と重なる最高の準備と「継続」。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byAsami Enomoto
posted2020/08/02 11:50
昨季は111試合に出場して打率.256、3本塁打。守備だけではないところも徐々に見せている。
しっくりきてない中でもヒットが出る。
柴田は昨季、打撃に関してある“決断”をした。オールスター以降、今季と同等の数字を残し、首脳陣をうならせた。
その決断のひとつは、それまで意識して取り組んできた逆(レフト)方向へのバッティングのイメージを一度胸の内に納め、早いカウントから強いスイングでボールを叩くことだった。結果、ライト前へのヒットを量産したわけだが、今季も鋭い打球が一、二塁間を抜けていくシーンがよく見られる。インコースをえぐる速球であっても、決して力負けせず跳ね返す。
本当ここまで調子がいいですね、と問いかけると、柴田は意外にも苦笑しながらかぶりを振った。
「いや正直、(バッティングの)感覚はあまりよくないんですよね」
一体どういうことだろうか?
「しっくりとはきていないんですが、それでもヒットが出ているというのは、ここ何年かゴウ(筒香嘉智)さんと一緒にやってきたことだったり、コーチの方々が指導してくださったことの継続が要因じゃないかって思うんです。やっぱその都度、つまみ食いじゃないですけど、そんな(いいかげんな)感じでやっていたらヒットは出ていないと思いますね」
明らかに変わった打球の質。
継続は力なり、と言うは易しであり、実行するのは簡単なことではない。すぐに結果は出ずとも我慢をして取り組んできたことが、後に自分自身を救うことになる。
それは興味深いことに、まだヒット数こそ少ないが、見直しを図った逆方向へのバッティングにも活かされている。体軸のしっかりとしたスムーズなスイングから放たれるレフト方向への打球は、昨年とは伸びの違いが感じられる。まるで肉体と連動するように放たれた打球は、一流の打者にしか出すことができない美しささえ感じさせる。そう伝えると柴田はうなずいた。
「たしかに打球の質は、明らかに去年までとは違うなという感覚はあります。そこはもっと技術を高めていくことができれば出塁率も上がっていくと思いますね」
如実にそれが表れていたのが7月28日の巨人戦だ。6回表、ランナー一塁の場面で打席に入った柴田は、菅野智之を相手にインハイのカットボールを空振りしたあとの4球目、外角に甘く入った149kmのストレートを頭をブレさせることのない素直なスイングで振り抜き、レフトフェンス直撃の二塁打を放っている。目の覚めるような一撃だった。