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薄幸の点取り屋ベンゼマの美学。
「ナンバーワンでなくてもいい」 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2020/07/29 11:40

薄幸の点取り屋ベンゼマの美学。「ナンバーワンでなくてもいい」<Number Web> photograph by Getty Images

「BBCトリオ」の中で、最も長くマドリーに貢献するのがベンゼマだと見抜いていたのはジダン監督くらいだろう。

モウリーニョもあまり信頼を寄せず。

 2年目の2010-11シーズンからマドリーの指揮を執ったジョゼ・モウリーニョも、当初はベンゼマに全幅の信頼を寄せていなかった。練習に遅刻するなど、本人の素行にも問題はあったが、イグアインが椎間板ヘルニアで長期離脱となった時には、こんな皮肉も吐いている。

「犬と一緒に狩りにいけないのなら、気まぐれな猫(ベンゼマ)を連れて行くしかない」

 それでも、8kgの減量に成功して臨んだ勝負の3年目に、キャリアハイの21ゴールを挙げて4年ぶりのリーグ優勝に貢献すると、2012-13シーズン終了後にイグアインが退団したこともあって、ベンゼマは着実にマドリーの「9番」としての地歩を固めていくのだ。

「BBC」の3番手扱いをされる中で。

 ただし、主役ではない。

 入団2年目から、憧れの存在だった“元祖フェノーメノ”ロナウドが背負ったエースナンバーを託されていたが、彼の役割は爆撃機のようにみずから相手ゴールを急襲することではなく、あくまでもC・ロナウドの援護射撃だった。

 C・ロナウドのように年間50ゴールを奪うのではなく、C・ロナウドが年間50ゴールを奪えるように汗をかく。ストライカーとしての自負が多少なりともあれば、屈辱以外の何物でもないだろう。

 2013-14シーズン、新たにギャレス・ベイルを獲得したマドリーの前線は、ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドの頭文字をとって「BBC」と呼ばれたが、立場的にも、周囲が抱く印象的にもベンゼマは3番手。入団当時の扱いとなんら変わっていなかった。

 もっとも、黒子を演じながら毎年コンスタントに2桁得点をマークするなど、誰にでもできる芸当ではない。

 2013-14シーズンに通算10度目のチャンピオンズリーグ(CL)制覇を成し遂げた当時の指揮官、カルロ・アンチェロッティは、ベンゼマについてこう表現している。

「カリムは素晴らしいFWではない。素晴らしい選手だ。すべてを備えた素晴らしい選手なのだ」

【次ページ】 万能型なのに主役になり切れない。

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