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遠藤航、長谷部との共通点と家族愛。
冷静で超マイペースな言動の凄み。
posted2020/07/28 07:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
2019-2020シーズンのブンデスリーガ2部。遠藤航の所属するVfBシュツットガルトは自動昇格圏の2位でシーズンを終え、2シーズンぶりとなる1部復帰を決めました。
遠藤は昨季開幕前、8月13日にベルギーのシント・トロイデンから期限付きで加入し、今年の4月28日には完全移籍となってクラブの目標達成に多大な貢献を果たしました。
このように事象だけを綴ると、遠藤のヨーロッパでの挑戦は順風満帆に感じられます。でも実際には、彼がこの成果を勝ち取るまでには数多の困難があったのです。
「誰かの歩き方に似ているなぁ」
僕が初めて遠藤を直接取材したのは、彼が湘南ベルマーレから浦和レッズへ加入した直後の2016年2月でした。当時の遠藤はリオ・オリンピックに出場するU-23日本代表の主力で、『AFC U-23選手権カタール2016』に参加していたためチームへの合流が遅れていました。
鹿児島県指宿市で実施された浦和のキャンプの午前練習後に練習場にやってきて、チームメイトとは別行動で淡々とストレッチやジョギングに励んでいた姿を覚えています。
遠藤の第一印象は「やけに、どっしりと落ち着いているなぁ」といったもの。新天地に初合流した際の初々しい振る舞いや緊張感は感じられませんでした。
彼は今でもそうですが、多少ガニ股気味で両肩を前後に振ってドッシ、ドッシと歩いていました。その姿を見て「誰かの歩き方に似ているなぁ」と思ったのです。
ひとしきり考えて、「あっ!」と思い出しました。長谷部誠にそっくりなのです。
長谷部も開き気味の両足と肩を張る歩き姿をよく見せています。その落ち着き払った仕草も含めて2人には共通点があるように思いました。「後ろ姿が長谷部選手に似ているように感じます」と遠藤に伝えると、彼はこう返してくれました。
「それ、那須(大亮)さんにも言われたことがあります! 『ハセに似てるよね』って。でも、自分では分からないですよ、自分の歩き姿を後ろから見たことなんてないもん」
かくして僕は、自身の頭の中の引き出しにおいて、遠藤と長谷部を勝手に同じファイルフォルダに収めることになりました。