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薄幸の点取り屋ベンゼマの美学。
「ナンバーワンでなくてもいい」
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2020/07/29 11:40
「BBCトリオ」の中で、最も長くマドリーに貢献するのがベンゼマだと見抜いていたのはジダン監督くらいだろう。
バロンドールの選考がなくなり……。
マドリーに入団以来、このメガクラブの一員として数々の栄光に浴してきたベンゼマだが、得点王など特記すべき個人タイトルはひとつもない。
また、フランス代表としてもW杯出場は'14年大会の一度だけで、'15年に代表のチームメイトだったマテュー・バルブエナへの恐喝疑惑が発覚(本人は容疑を完全否定)してからは、事実上の追放状態に置かれている。
そうした点もまた、ベンゼマというプレーヤーから華を奪う要因となっているのだろう。
しかも残念なことに、せっかくラ・リーガでMVP級の働きをしながら、今年度は新型コロナウイルスの影響によって、バロンドールの選考自体がなくなってしまった。
仮に選考が行われていれば、例えばレバンドフスキやリオネル・メッシらとともに、最終ノミネートの3人に選ばれていた可能性は大いにあったはずだ。
またしてもスポットライトは遠のいた。つくづく、幸の薄い男である。
それでもベンゼマは意に介さないのだろう。なにしろ、ナンバーワンになる気などさらさらないのだから。彼は今、とても幸せなサッカー人生を過ごしている。