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遠藤航、長谷部との共通点と家族愛。
冷静で超マイペースな言動の凄み。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/07/28 07:00
VfBシュツットガルト1部昇格に多大な貢献を果たした遠藤航。苦難の多いヨーロッパでの挑戦を冷静な闘志が支え続けた。
遠藤がこだわっていたポジション。
遠藤は浦和に移籍した頃から、あるポジションにこだわりを見せていました。
湘南時代は主に3バックの右ストッパーでしたが、キャプテンも任されたU-23代表で手倉森誠監督から任命されたボランチ、もしくは、セントラルミッドフィルダーの役割に意義を見出していたのです。
ところが当時、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いていた浦和ではボランチの人材が豊富な反面、ディフェンスの要であるリベロやストッパーが枯渇していた事情もあって、遠藤は大半の試合でディフェンスラインの一角に入っていました。
その流れもあり、2018年7月21日にシント・トロイデンへの完全移籍が決まった時期の遠藤はより一層MFのポジションにこだわりを見せていました。「シント・トロイデンには最初から『ボランチで勝負させてください』と言っていた」と言うから、その覚悟のほどがうかがえます。
ポジション争いは熾烈を極めた。
遠藤の考えには一貫性がありましたし、その理由も明確だったように思います。リオ・オリンピックやA代表のワールドカップ予選などで数多くの国際舞台を経験していた彼は、ヨーロッパで勝負をする際に自らの体格ではディフェンダーで成功を勝ち取るのは難しいと感じていたのです。
とはいえ、ヨーロッパはディフェンダーのポジションに限らず、各ポジションに強靭なフィジカルを有する選手が群雄割拠していますから、事はそれほど単純ではありませんでした。ましてや遠藤が勝負することに決めたボランチ、もしくはセントラルミッドフィルダーのポジションはチームの中心に鎮座して攻守両面での貢献が求められる、いわば要のような存在ですから、そのポジション争いは熾烈を極めるわけです。