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遠藤航、長谷部との共通点と家族愛。
冷静で超マイペースな言動の凄み。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/07/28 07:00
VfBシュツットガルト1部昇格に多大な貢献を果たした遠藤航。苦難の多いヨーロッパでの挑戦を冷静な闘志が支え続けた。
異常気象の中、その瞬間を見た。
シント・トロイデンでの船出も前途洋々ではありませんでした。
2018年8月5日のデビュー戦は、隣町ヘンクでのダービーマッチ。ヘンクは常にリーグ戦の上位に位置する強豪で、プロビンチャのシント・トロイデンにとっては分の悪い相手です。
遠藤は途中出場で、しかもトップ下でチームの攻撃をリードしていたロマン・ベズスと交代しての出場。慣れない攻撃的な役割を任されました。
「そうそう。ボランチというよりもシャドー寄りでした。僕が入る直前に失点したので、チームも『点を取りに行くしかない』という雰囲気になっていたんですよね。だから僕も割り切って『攻撃的に行こう』と思っていました。でも、まさかファーストプレーで結果を残せるとは思っていなかったですけどね(笑)」
僕は、この試合を現地で観戦していました。
ヘンクのホーム、クリスタル・アレナは市内中心部からかなり離れた不便なところにあるのですが、それでも住居のあるドイツ・フランクフルトから駆けつけ、異常気象で30度を超す猛暑の中、彼のゴールを目の当たりにしました。
その瞬間は僕も「ウォーッ!」と叫んでしまい、周りのヘンクサポーターから白い目で見られました。それでも、彼のゴールで1-1でゲームを終えた後に売店で買ったビールはとても美味しかった。暑かったものなぁ、あの日は……。
さすがに冷静すぎるだろ!
遠藤の凄みは、その振る舞いにあると感じています。基本的に落ち着いていて、動じることはありません。もちろん自らがゴールした瞬間は感情を爆発させて喜びますが、試合が終われば「はい、次」といった風情で成果をひけらかしたりしません。
ちなみに勝利後、彼に話を聞いていると、あまりにも反省の弁を述べるから途中で僕が勘違いして、「今日の敗戦を次にどう生かします?」と聞いてしまい、本人から「いや、勝ってますけどね(笑)」と指摘されたこともあります。恥ずかしい……。
チームメイトも遠藤の落ち着きぶりを指摘していました。かつて浦和レッズ、そしてシント・トロイデンでも共に戦った関根貴大はこう言います。
「わっさんは僕がシントで試合終盤に初ゴールを決めて、むちゃくちゃ嬉しくてガッツポーズなんかしていたときに、すぐに僕のところへ寄って来てこう言うんですよ。『初ゴールおめでとう。でもまだ同点だから。試合、終わってないからね』って。さすがに『冷静過ぎるだろ!』って思いましたよ(笑)」
いやぁ、実に遠藤らしい。そのあたりは、4児の父親としての威厳なのでしょうか?