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遠藤航、長谷部との共通点と家族愛。
冷静で超マイペースな言動の凄み。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/07/28 07:00
VfBシュツットガルト1部昇格に多大な貢献を果たした遠藤航。苦難の多いヨーロッパでの挑戦を冷静な闘志が支え続けた。
なんかモグモグ食べてたわよ。
遠藤は超マイペースです。2020年2月1日のザンクトパウリとのアウェー戦の後、僕が取材に来ていることを事前に知っていた遠藤は試合終了後、ピッチからミックスゾーンを通る際「ちょっと待っててくださいね」と一旦ロッカールームへ引き上げました。
しかし一向に出てくる気配がありません。ちなみにこのときの日本人記者は僕ひとり。現地ドイツ人記者が他の選手を囲んで取材を行っていましたが、それも30分くらい経つと誰もいなくなってしまいました。ザンクトパウリの広報さんが僕に声を掛けてきます。
「何してるの? リョウ(宮市亮)? リョウなら、もういないわよ」
「いや、宮市選手はしっかり取材対応してくださいました。今は、ワタル・エンドウってシュツットガルトの選手を待っていまして……」と言うと、「じゃ、アウェーのロッカールームを見てくるわ」と確認しに行ってくれました。2分後、笑顔を浮かべた広報さんが戻ってきて、こう言います。
「彼、居たわよ。でも、なんかモグモグ食べてた。だから、もうちょっと待っててね」
10分後、遠藤が遠くから悠然と、例の貫禄ある歩き方でこちらに向かってきます。その片手にパン持ってるし。
僕を視認した彼は、「誰も居ないほうが落ち着いて話せるでしょ」と言って、口をモグモグさせながら、どこまでも柔和に微笑んでいました――。
異国の地で戦う「ヤーパニッシェ・シュピーラー(日本人選手)」は、唯一無二の個性を携えるブンデスリーガーとして、満を持して2020-2021シーズンのブンデスリーガ1部に参戦します。