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遠藤航、長谷部との共通点と家族愛。
冷静で超マイペースな言動の凄み。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/07/28 07:00
VfBシュツットガルト1部昇格に多大な貢献を果たした遠藤航。苦難の多いヨーロッパでの挑戦を冷静な闘志が支え続けた。
単身赴任だけは絶対に避けたい!
ところで、遠藤は家族との生活や触れ合いを大事にしていて、単身赴任に関しても「(自分の気持ちとして)ありえない」とのこと。ベルギーでも現在のドイツでも、仲良く家族全員で暮らしています。
シュツットガルトへ移籍してからは長男が地元の名門クラブであるシュツットガルト・キッカーズのアカデミーチームに飛び級で加入し、それに際して遠藤自身がこんな決意を述べていました。
「いやーもう、これで、なんとしても完全移籍を勝ち取らなきゃダメでしょう。このまま結果を残せなかったらベルギーに戻ることになるわけだけど、そうなったら子どものことを考えて俺が単身赴任するかもしれない。それだけは絶対に避けたいですからね!」
お父さんとしての揺るがない決意でした。
ちなみに、こう言っていた当時の遠藤はシュツットガルトのティム・バルター監督からなかなか評価を得られず不出場が続いていて、まさに正念場でした。
「次にここに来るときは、僕の試合を観に来るタイミングにしましょうね」と言っていましたが、心の内では焦燥感に苛まれていたはずです。でも、そんなときでも一切その苦悩を表に出さず、淡々とした態度を貫いていました。そんな佇まいを見ると、周囲は「彼だったら大丈夫」という気がしてきてしまうんでしょうね。だって僕がそうでしたから。
つかみ取った素晴らしい成果。
シュツットガルトでの彼のポジション争いは激しく、特に本人が希望していたアンカーポジションでは、ベルギー人のオレル・マンガラという才能豊かな若手MFがレギュラーを掴んでいました。
遠藤自身も当時の自らの境遇を認識していて、手薄な右サイドバックで起用されることも想定していました。でも、第12節のディナモ・ドレスデン戦で途中出場した翌々節、2019年11月24日のカールスルーエとのダービーマッチでアンカーとして先発フル出場し、3-0の快勝を果たしてから評価が変わりました。
バルター監督からペルグリノ・マタラッツォ監督へと代わっても、最後までその信頼が揺らぐことはありませんでした。
遠藤は2020年4月28日にシュツットガルトと完全移籍での新契約を交わしましたが、これは新型コロナウイルスの流行でリーグが中断されている最中でした。
今後のリーグ運営、クラブの経営状況など様々な懸念がある中で交わされたこの契約は、シュツットガルトが遠藤を高く評価している証でしょう。本当に素晴らしい成果だと思います。