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ラグビーの「獣性」が凝縮された、
イングランドとジョージアの奇祭。
posted2020/07/29 20:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Keijiro Kai
外国への旅にも行けない。
ラグビーの試合を現場で見ることもかなわない。本当なら、6月末にはウェールズ代表、7月にはイングランド代表が来日し、日本代表も3年後のフランスW杯に向けて始動しているはずだったのに。
なにもかもが、止まったままだ。
そんなときに、甲斐啓二郎さんの『骨の髄』という写真集を手に取った。
驚いた。
世界各地で、荒々しく、ボールを使ったり、なんの恨みもない相手と戦ったりする「祭り」がまだ生き残っていたことに。
日本、ヨーロッパ、南米の5つの祭り。
撮影されている世界の町は、次の5つだ。
・イングランドのアッシュボーンで行われている「Shrovetide Football」と呼ばれるマスフットボール(数百人、あるいは数千人が参加する集団的なフットボールのこと)
・秋田県美郷町の「六郷のカマクラ祭り」
・ボリビアのマチャでの「Tinku」
・長野県野沢温泉村で毎年1月に行われる「道祖神祭り」のクライマックス、「火付け」
・ジョージアのシュフティ村でイースター・サンデーに行われる「Lelo」
もともと西洋のフットボールは町の祭りと深いかかわりがあり、お祭りの日に教区対抗や村対抗で大勢の男性が参加して、相手の教会や町の特定の場所にボールを運んだら勝ちとなる。
ただし、それはすぐに決着するのを目的とするのではなく、みんなが1日中楽しめるような工夫=ルールが設定されていた。